いて座
螺旋の動き
古酒の壺
今週のいて座は、『秋風や謎のやうなる古酒の壺』(原月舟)という句のごとし。あるいは、じっくりと酒を酌み交わしあうようにして謎を深めていこうとするような星回り。
目の前には1つの酒を入れた壺がある。それは今年できた新酒ではなくて、古酒である。酒壺はどこかこちらを圧倒するような感じのする、それなりの大きさの壺であるに違いない。
天はいま秋風が吹いて、草木もますます枯れてきており、どこかものさびしい感じがしている。そうした感じを受けて改めて壺を眺めていると、この壺は1個の謎として自分の前に立っているように思えてならない、というのです。
一体いつから壺はそこにあったのか、そもそも名はあるのか、壺が蔵している古酒はどんな熟成を遂げているのか、そしてその味わいはどんな具合で、他の何ものとも似ていないのはなぜなのか。
これはいつの間にか自分が蔵していた事実や思い、感情などに不意に気付いてしまった時の感じとも通じるところがあるのではないでしょうか。
私たちは人生の歩みや他者との関わりを通じて、時に一筋縄ではいかない固く結ばれた謎をどうしたって宿してしまうものだから。その意味で、10月11日にいて座から数えて「実感の深まり」を意味する2番目のやぎ座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自身の前に謎のように立ち塞がる人生の謎とじっくりと向き合ってみるといいでしょう。
ラマルクの「形成力」
今日の世界では進化論と言えばダーウィンの自然選択説(環境によりよく適応したものが子孫を残して,その変異を伝える確率が高くなるというもの)が定説となっていますが、じつは彼以前に最初に進化論を唱えたのが19世紀の博物学者ラマルクでした。
ラマルクはすべての生物はほぼ同じ進化の道筋をたどると主張し、複雑怪奇な生物の大連鎖もある一点から見ればひとつながりの系統になるだろうと考えました。つまり、「現在さまざまな生物がいるのは、それぞれの生物が自然発生してから経過した時間が違うからであり、単純なものほど新しく、複雑な生物ほど古くに発生した」(更科功『化石の分子生物学――生命進化の謎を解く』)という風に。
つまり、すべての生物には何らかの「生きる力」が潜んでいて、その力に直線志向的に導かれるように、種は固定したものではなく進化していくのだと発想していた訳です。当然、遺伝情報の本体としてDNAなど知る由もない頃です。
彼はすべての生物の中に流れている新たなフォルムを生む力を「形成力」と呼びましたが、これはちょうど先の「古酒」が長期にわたる熟成(進化)を経て、新酒とは異なる何かへと変化してきた過程を底支えする原動力に置き換えてもいいかも知れません。
今週のいて座もまた、古くに発生していまだ生き残っている“何か”の複雑さに、ある種の可能性や好感触を見出していきやすいはず。
いて座の今週のキーワード
生命進化の謎