いて座
運命の裏表
行きづりの縁
今週のいて座は、『行きづりに聖樹の星を裏返す』(三好潤子)という句のごとし。あるいは、裏側に隠された真実を表に出していこうとするような星回り。
行きづりに、つまり、ほんの通りかかったついでに、クリスマスツリーに飾られた星型のオーナメントを裏返したのだという。もともとクリスマスツリーに飾られた星は、枝の間から見える星空の美しさを再現するためのものであり、掲句の「星を裏返す」というのも、ほんのちょっとの関わりを通してこの世界の見え方や運命としか言いようのないものが変わってしまうことの隠喩的な表現なのでしょう。
しかし、そう考えるほどに「行きづり」というのは、たまたまの偶然ではなく、何かしら必然的なものだったのだと感じられてきます。少なくとも、句を詠んだ作者は心の奥底ではそのことがよく分かっていたのではないでしょうか。
あの時なんとなく声をかけただけとか、たまたまあの場に居合わせただけ、タイミング的に別件でいろいろあったのでその反動でなど、いずれにおいても「行きづり」という言葉で表現される出来事というのは、つくづく運命の裏返しでしかないのです。
12月27日にいて座から数えて「深い結びつき」を意味する8番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、出会いや運命の表裏をきちんと見極めていく時間を思いがけず過ごしていくことができるかも知れません。
死から生を見る
ここで思い出される映画に、黒沢清監督の『岸辺の旅』という作品があります。3年前に夫・優介(浅野忠信)に失踪され、虚脱した日々を送っていた主人公の瑞希(深津絵里)の前に、ある日ひょっこり夫が現われ、自分がすでに死んでしまったこと、そしてここに戻ってくるまでに長い旅をしてきたことを告げる。
3年という待つ側にとっては決して短くはない期間に、一体夫はどこにいて、何をしていたのか。それを知るべく、主人公は夫の最後の旅に同行していく過程で、成仏しきれずこの世にとどまってしまっている人々の魂をあの世に導いていくのだが…。
死んだはずの配偶者が幽霊となって帰ってくるというある種のファンタジー系恋愛映画の王道を思わせるこの映画は、死者といっても直接見て触れることができ、生きた人間に混じって普通に生活しているという演出や、主人公の「違いなんて何もないのかもね、優介と私と」といったセリフもあいまって、どこか奇妙なリアリティーを感じさせるのですが、終盤に旅路の「終わり」の雰囲気が漂い始めるにしたがって、それが死者は死者であり生者とは違うのだという現実をかえって残酷に突きつけることになります。
そして、こうした演出は今週のいて座のリアリティーにも少なからず通底するところが出てくるでしょう。そこでは、叶うことと叶わぬこととの線引きが、静かながらもはっきりと示されてくるはずです。
いて座の今週のキーワード
縁をといだたす