いて座
純粋なる贈与
花火師の愛
今週のいて座は、『花火師の闇にまぎれてより潔し』(源鬼彦)という句のごとし。あるいは、自分が何に対して「無償の精神」を発揮しているかを再確認していくような星回り。
作者は昭和18年樺太生まれで、祖父の代から樺太の開拓に従事してきたものの、敗戦を機にみずから通信教育を受けて田舎を抜け出す努力をした苦労人。掲句は、郵政局の登用試験に合格後、新しい職場での地位もようやく安定してきた一方、俳句雑誌の編集長としても活躍し、忙しい日々を過ごしていた昭和54年頃に詠まれたもの。
華々しく夜空に咲き乱れる花火。しかし、その花火を打ち上げる花火師は、危険と隣り合わせに闇の中で汗水をたらし、誰にも見向きもされず地味な労働に明け暮れる。その姿に自分自身を重ねたのでしょう。
それは精神的にも肉体的にも大変なことだったはずですが、それを支えていたのは「今の文学の世界は無償の精神がなければ、発展どころか現状維持さえもできない」という作者の思いだったといいます。
こうした作者の情熱には、どこか祖父の代から受け継いできた作者の開拓者精神のようなものが伺えますが、それは本来いて座の人たちにも通底しているものであるはず。その意味で、7月10日にいて座から数えて「与える愛」を意味する5番目のおひつじ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自身の場合は情熱がどのような形をとっているのか改めて認識していくことになりそうです。
蝋燭の画家
高島野十郎という、生涯にわたって蝋燭の絵を描き続けた画家がいます。一度、個展を見に行った際、数十枚もの小品の蝋燭の絵がずらりと並んでいる光景はなんとも異様でした。
蝋燭の火は確かに明るい色彩で描かれているのですが、その焔の下部には必ず深い瑠璃色が使われており、それはちらつく焔に呼応するように広がった闇の色そのものでした。
高島はこうした蝋燭の絵を、展覧会などに出展する作品としてではなく、いわんや売るためでもなく、身近な者へ直接手渡すための贈呈品として描き続けたのだと言います。
まるで献灯の儀式のような宗教的な行為ですが、高島はきわめて小さな画面のなかに、永遠に果てることのない光を刻み込み、自身の思いをそこに凝集させました。その意味で、蝋燭の絵は高島と贈られた者との濃密な関係性を媒介する<縁>そのものであり、そこにはやはり彼なりの「無償の精神」が働いていたのではないでしょうか。
今週のいて座もまた、誰かとの縁や繋がりを通して、みずからの生きがいを再認識していくことができるかも知れません。
いて座の今週のキーワード
闇の中で汗をかく