いて座
揺らぎでしかありえない
※12月13日〜19日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。
次回は12月19日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
個体として在るということ
今週のいて座は、ハイブリッドであることの肯定のごとし。あるいは、モデルにしていた理想を脱ぎ捨て、<私>であることそのものを追求していこうとするような星回り。
落葉樹から落ちていく一枚一枚の葉であれ、人間であれ、それらが個体である限り、どれだけ人為的に設けられた分類やカテゴリーに押し込めようとしても、それら一つ一つはいつもそこから溢れかえっていく反乱そのものであり、揺らぎでしかありえないという意味で、その存在自身が異他的であること(ハイブリット)の肯定を示しているのだと言えます。
すなわち、個体とは揺らぎであり、不純であり、偏ったものでしかありえず、幾分かは奇形的なものでしかありえず、だからこそ、世界という問いを担う実質であり得るのだと。
そしてもし、そういう個体の実相を肯定するような倫理というものがあるとすれば、それは死の安逸さも、他者による正当化も、正義による開きなおりもありえない、たえず変化し続け、予測不可能な生成をうみだし続ける生の流れを、その過酷さとともにあらわにするものでなければならないでしょう。
同様に、11日にいて座から数えて「肯定する倫理」を意味する4番目のうお座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、きまりきった分類やモデルからたえず逸れていく自分自身を大いに肯定していくためのベースを固めていくべし。
日野啓三『雲海の裂け目』
小説家の日野啓三は癌を患ったのち、病後はじめての旅行へ出かけたその帰り道に、沖縄から東京へ向かう飛行機の上で、次のような光景を見たのだそうです。
窓から外を眺め渡しているつもりが、次第に自分の意識の奥を覗き込んでいる気分になる。雲間から輝き出る光は、いまや朱色より強烈なオレンジ色に近い。赤や朱色よりエネルギーの高い色だ。私の意識の雲海の奥には、これほどのエネルギーが秘められているのだ、とほとんど信じかける。(中略)
荒涼と豪奢で、神秘的で自然で、生き生きと寂莫で、畏怖と恍惚の想いを区別できない
ここで作者が見たこの世ならぬ光景は、人間である作者の存在そのもの、またはそれについての意識に直接繋がっていたのでしょう。それは根源的でありつつも、どこかそれを突き放した目線で観察できるがゆえに、二律背反的な感情を作者にもたらしたのです。作者は先の引用箇所に先立って「夢の中でさえこの質の色は見たことがない」とさえ書いていました。
今週のいて座もまた、作者の場合ほど劇的なものではないとしても、「意識の雲海の奥」に秘められた根源的エネルギーを垣間見ていくことになるかもしれません。
いて座の今週のキーワード
二律背反的感情