うお座
ビジョンを掘り出す
ミケランジェロの鑿
今週のうお座は、自分の抱く夢想やビジョンに具体的な輪郭を与え、形にしていかんと始動していくような星回り。その様は、さながらカラーラの石切場に向かったミケランジェロが未来の石像を彫るべく最初の鑿の一振りをいれるようです。
その際、大事なポイントになってくるのは、ミケランジェロはまず大まかな人型を整えてから、全体のバランスを見つつ徐々にディティールを仕上げていくのではなく、いきなり鼻や眉や指先など、細部のディティールを掘り出してしまうという点です。彼は次のような言葉を残したと言われています。
「全て大理石の塊の中には予め像が内包されているのだ。彫刻家の仕事はそれを発見する事」であり、「大理石の中には天使が見える、そして彼を自由にさせてあげるまで彫るのだ」と。
今週のうお座も、あなたが望む未来や天職に関わる石像を大理石の中から掘り出すべく、まずはその取っ掛かりとなるべき些細な描写を与えることから始めてみるべし。
想像都市を描写するように
天職のビジョンというのは、プラトンのアトランティスからマルコ・ポーロの黄金郷ジパングまで、どこか現実とは異なる次元に存在する理想の人工都市をめぐる夢想と似ているところがあり、それはうお座の想像力の完成形を暗示します。例えば稲垣足穂が何かにつけて持ち出す想像都市は、次のような描写から語られていきます。飯のタネにはなりませんが、どうぞご参考までに。
「…知っていられるとおり、あそこは昼間がたった六時間しかない、その上、夕方というものもないので、まるでシャッターが降りたようにまっくらになる。…全く、ここへ来た最初の二三日というものは、僕は、螺旋形に虚空に突き出した岬の波のように起伏した路や、どこから行くんだろうと怪しまれれるほど高いところにならんだ電灯や瓦斯灯やアークライトに目を奪われて、新アラビアンライトの夢を見ているような気が失せなかった。」(『二十世紀須弥山』)
今週のキーワード
ミケランジェロは大理石から天使を掘り出し解放する、稲垣足穂『二十世紀須弥山』、飯のタネにはならぬ