うお座
タガを外すための日々の仕掛けを
何のための勉強か?
今週のうお座は、ハインリヒ・シュリーマンの独学ぶりのごとし。あるいは、「目的達成のための勉強」ということを改めて再設定していこうとするような星回り。
トロイの遺跡を発掘したことで知られるシュリーマン(1822~1890)は、8歳の時に本で見たトロイア戦争の挿し絵に衝撃を受け、長年伝説や夢物語とされてきたトロイアの実在をひとり信じるようになり、大人になったら必ず遺跡を発掘するという大志を抱いてさまざまな職を経ながら資金を貯め、見事51歳の時に夢を実現させました。
彼は非常に先見の明のある人物であった一方で、自意識過剰な俗人であり、賞賛と悪評が混在する人物でもあったようですが、少なくとも目的達成のために自己投資し続けた点に関しては驚嘆すべき偉人であることは間違いありません。そして、そんな彼の尋常でない努力の片鱗がうかがえるのが彼の徹底した独学ぶりでした。
まず私は読みやすい筆跡を習得しようとして、ブリュッセルの有名な書家マネーに二十時間の授業をうけて、十分に目的を達した。つづいて、自分の地位をよくするために、熱心に近代語の学習をはじめた。私の年収(…)のなかばを学習につかい、他の半分で私の生活費をまかなったのだが、どうにかやってゆけた(『古代への情熱―シュリーマン自伝―』)
彼の本を読んでいると、勉強する上で一番大切なことは、目的を明確にすることであることが痛感されてきます。シュリーマンは、趣味の勉強とは一線を画した「目的達成のための勉強」ということに可能な限りこだわり、文字通り全力を尽くしていったのです。
もちろん、いきなりシュリーマンと同じレベルの努力を実行することは難しいでしょう。けれど、目標を幾つかに分け、それらを完遂するために必要なことをきちんと洗い出し、嫌でもやらざるを得ない状況へとみずからを追い込んでいく彼の方法論を真似してみること自体は、そう難しくないはず。
12月27日にうお座から数えて「自己投機」を意味する5番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分がどこに向かって、何のために、いかにして日々の努力を積み重ねていくべきかということを、改めてゼロから描き直してみるといいでしょう。
タガを外す
大抵の人は自分という存在をおおぜいの人前でさらけだすことに対して、嘲笑われたり、拒否されるのではないかと、心のどこかで恐怖や脅えを持っているものです。
しかし、時に自意識のタガが外れるときがあります。たとえば何かを全身全霊で表現せざるを得ない状況に追い込まれたり、そうしたものを鑑賞することを通じてカタルシスまで至ったとき。そのとき人は、目に見えない、神秘的な力に触れている感覚を覚え、緊張は一気に弛緩へと向かうのです。
そういう意味では、シュリーマンもまた、勉強することを通して、どうにかこうにか単発で終わることなく連続的にみずからのタガを外していこうとしたのかも知れません。
今週のうお座もまた、もし何らかの形で自分の夢なり思いなりを表現するチャンスが与えられているのなら、どうしたら自分もそこへ向けてタガを外していけるかをじっくりと思案していきたいところです。
うお座の今週のキーワード
「年収(…)のなかばを学習につかい、他の半分で私の生活費をまかなったのだが、どうにかやってゆけた」