うお座
世間体と自然体のあいだを調整する
大いにボケてツッコまれよう
今週のうお座は、キタ・モリオ病にかかった北杜夫のごとし。あるいは、堅苦しく縮こまりがちな世間体をぶるんぶるんと揺り動かしていくような星回り。
いつだったか、坂口恭平がどこかで「SNSで他人の書き込みや反応でいちいち一喜一憂している人はみんな躁うつ病」と書いていたのを見て以来、いまの日本社会は“一億躁うつ病社会”と言っていいのではないかと思う一方で、どこか型にはまった病人が多いような印象を受けてしまいます。ここで思い出されるのが、壮年期に突如躁うつ病になった作家の北杜夫が、自身の体験について娘の斎藤由香と最晩年に対談した『パパは楽しい躁うつ病』。
娘のツッコミに対する父の反応が、どこまでがボケで、どこからが本気なのかよく分からなくてとにかく絶妙なのです(※躁うつ病は現在「双極性障害」と名称変更されている)。
由香 私が小さいときからパパはずっと躁うつ病が続いたんだけど、歳をとったらうつ病ばかりで、「もう躁病は来ないのかな」と思ってたら、一九九九年に突然、大躁病になったのよね。
北 ……。
由香 二人で競馬を見ていたら、サイレンススズカが安楽死させられて、パパが「パパももう原稿も書けないし、生きていてもしょうがないから安楽死させてくれ」と言ったので、私が「サイレンススズカは名馬だけれど、パパは駄馬だからダメ!」って言ったら、元気になった。
北 ……。
由香 それまでずっとうつ病でつまらないなと思ってたから嬉しかったけれど。パパは自分でナマ原稿を売って株や競馬をやってました。
北 いや、くだらないやつだけ。
由香 いくらになったの?
北 うん?
由香 うん? じゃなくて。
北 うん。
由香 担当の編集の人から四〇万って聞きました。
北 いや、あの、あのときの書庫の改造で、書庫の本をほとんど売らなきゃいけなかった。
(…)
由香 ママが「競馬のためにナマ原稿売るなんて、なさけない」と言ってました。
実際、病気がひどくなった頃は、自宅が抵当に入り、借金も1億をこえたそうですが、にも関わらず、家の中は笑いが渦巻いていたのだとか。もしかしたら、病気自体が北の壮大なフィクションだったのかも知れません。
15日にうお座から数えて「世間体」を意味する10番目のいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、これくらい堂々とハチャメチャでありたいところです。
自然に任せる
毎年春先になると、そろそろ暖かくなってきたかなという日が続くと、今度は寒さがぶり返してくる、ということが何度が繰り返されますが、こういうことは人生の調子や運気の流れにもよく起こってくることです。
ただ、時々もうすっかり季節が春に変わったのにも関わらず、過ぎた冬を思い出したかのように唐突に寒さが戻ってくる日があったら、それはまだ心の中で解消しきれずに残っていた“恐れ”のせいかも知れません。
とはいえ、そういう現象を必要以上に問題視したり、重く受け取る必要はないでしょう。環境へと適応しきれなくなった身体が、自身を調整するために風邪をひくように、きちんと熱を出して、汗をかき、一通り症状が出切るままにしておくこと。こうした症状にしろ先のボケっぷりにしろ、出てくること自体に必然性があるのです。
今週のうお座もまた、もし恐れが開いたのなら、風邪をひいたのだと思って、自然に任せて慌てず落ち着いて時間を取りましょう。
うお座の今週のキーワード
風邪の効用