うお座
想定外の価値に思い当っていく
アジールを自作する
今週のうお座は、反体制の“のろし”としての「反スケール」のごとし。あるいは、もはやSNS上の「イイネ」なんて何の価値もないのだとうそぶいていくような星回り。
グローバル資本主義が地球上のほとんどの地域に波及し、リモートワークが進んで場所に関わらず仕事ができるようになってしまった現代では、もはや“世俗”はどこまでも追ってくる影のごとく、その外に出ることはほとんど不可能なもののように思えます。
歴史を振り返ってみると、世俗的なしがらみから解放された逃げ込み寺のような場所が古代や中世には確かにあった訳ですが、そこに生きる人びとの「自由」や「平等」はあくまでカッコつきのものであり、貨幣経済や商業の発展と切っても切り離せない関係にありました。つまり、何もかも手放しで許される天国のような場所とは程遠かったのです。
2010年代であればインターネットがまだそうした逃げ込み寺になり得るのではないかと期待されていました。しかし批評家の東浩紀は、自身が創業し、ネットをフルに活用してオルタナティブな知のプラットフォームの運営を目指してきた株式会社ゲンロンの10年にわたる経緯や顛末について記した『ゲンロン戦記』の中で次のように述べています。
いまの時代、ほんとうに反資本主義的で反体制的であるためには、まずは「反スケール」でなければならないからです。その足場がなければ、反資本主義の運動も反体制の声も、すべてがページビューとリツイート数の競争に飲み込まれてしまう
1月22日にうお座から数えて「治外法権」を意味する12番目のみずがめ座で新月を迎えるべく月を細めていく今週のあなたもまた、規模の大小はともかく「ページビューとリツイート数」以外のスケールを自分なりに設定してみるべし。
何が当たれば‟ラッキー”なのか?
「ラッキーストライク」と言えば、戦後日本でもっとも愛されたタバコの銘柄のひとつですが、言葉自体を直訳すれば「運よく鉱脈を掘り当てる(命中!)」となります。
ここで考えてほしいのは、では何が“当た”れば、今のあなたは思わずラッキーだ!と心から思うことができるのかということ。
宝くじの高額当選?望んでいた仕事のオファー?いやいや、仕事や人生設計については自分で何とかできるから、やっぱり縁のある異性とのよい出会いや、意中の相手からの色よい返事でしょうか?
けれど、電車の中吊り広告やテレビで流れていたCMで見たような、そんなありふれた欲望のなまぬるい充足にスポイルされることを、本当にあなたは望んでいるのか(それこそ自分の人生にイイネを押す程度ではないか)。
むしろ、それらではちっとも満ち足りてないという「大いなる飢餓」への自覚と、全身が湧きたつような渇望へいたることこそ、「当たり」なのではないか。そして、往々にしてそうした腹の底からの渇望というのは、視覚的なコミュニケーションの中からではなく、触覚や嗅覚など、よりなまなましいコミュニケーションの中ではじめて生まれてくるはず。
今週のうお座もまた、そうしてみずからの内にある底知れない欠乏を受け入れていくこと。それ自体が時間かけて掘り出していくべき鉱脈なのだといえるでしょう。
うお座の今週のキーワード
やすらぎの鉱脈