うお座
涙と太陽
冬のひだまり
今週のうお座は、『日だまりを膝につくって冬が好き』(高勢祥子)という句のごとし。あるいは、じんわりモテていこうとするような星回り。
冬の日陰は寒々しくってたまらないが、日なたにいるとただそれだけで優勝した気分になれるからお得だ。ただそれ以上に気分よくなれるのは、ただ日なたにいるよりも、みずから日だまりをつくったとき。
すなわち、思い浮かべるだけでぽかぽかするような言葉を自分自身にかけたり、できるだけ幸せになれることに意識を向けたり時間を割くこと。そして何より、それを他の人とも分かち合っていくこと。
掲句でも、何かと負担がかかりやすく冷えやすい膝をやさしく労わるかのように日だまりをつくった上で、そうして自分自身と向きあう機会を与えてくれた冬のことをあえて「好きだ」とさえ言わせて、それを作品としてシェアしてくれている。…これはモテる。
何も言わずにサラダを取り分けてくれる人なんてもう目じゃないくらいにモテるし、何ならこういう人がひとりふたり増えるだけで、冷えに冷えた日本経済だって少しはあったまるのではないだろうか。
その意味で、11月30日に自分自身の星座であるうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、できるだけ「日だまりつくり」を心がけてみるべし。
「切に望む」ということ
しかしそもそもモテだの恋だのというのは、日本では絶対に成就しないからこそ成立するものであって、もし成就してしまえば、後は崩れるだけであると考えられていたのが、近代以降になって、次第にそれがとても耐えられない状態と見なされ、否定されるようになってきたのだった。
例えばプロポーズの言葉なら、「幸せにする」か「幸せにしてください」の二択で、「確実に幸せにできるかどうかは分からないけど、幸せにしてあげたい」と心から乞い願いながらグーっと押し黙った状態でいるのはどっちつかずということにされてしまう。当然、日だまりなんかつくっていても、それは何もしてないも同然と見なされるだろう。
けれど、そうした状態でいるからこそ高まってくるトキメキやゆらめき、皮膚感覚のかすかな変化、からだの芯が燃えてきたり、その熱がそっと誰かに伝わっていったりといった、微妙な出来事がすっかり見落とされるようになってしまったのではないか。さらに恋焦がれる状態が続かないから、そこから哲学をしたり、やむにやまれず泣いてしまったり、思いがけず大失敗することもなくなってしまったし、「切に望む」ということも分からなくなってしまったのかも知れません。
その意味で、今週のうお座もまた、巨大な葛藤としての恋や哀れを自分の中に見出し、それをぐっと持続させたり増幅したりしていくことができるかどうかが問われていくでしょう。
うお座の今週のキーワード
日だまりと水たまりは表裏一体