うお座
新たな回路を開いていく
風景異化の遊び
今週のうお座は、「仮想の鬼ごっこ」に興じていくよう。あるいは、見慣れた日常や生活空間の風景を異化していこうとするような星回り。
この遊びをするには、まず人がたくさんいるような都市部や街中を舞台に必要があります。参加者はできるだけ3人以上で行い、スマホにアプリなどで他のプレイヤーの位置情報も表示されるように設定し、ランダムで鬼を決めた上で、その地図画面だけで鬼ごっこを行っていくのです。
例えば、自分が鬼に追いかけられている側であるとすれば、画面の中には自分の位置と、鬼の位置が表示されている。鬼は相手を捕まえようとすると、そのプレイヤーのいる位置の1メートル以内に近づく必要があり、そうすると実際に捕まってしまう。
だから画面を見ながら逃げねばならないが、実際に目で見えている街の様子や人混みからは、誰が鬼なのかはなかなか特定できない。目の前にいる人が鬼かどうかは、地図画面の中でしか確認できないのです。
こういう遊びをしていると、実際に見えている風景と直面している現実が微妙にズレているために、知覚が混乱し、何らかの風景異化すなわち景色がこれまでと違って見えてくるように感じられます。異化は強すぎれば単に混乱をもたらすだけですが、適度であれば、新たに脳の回路を開いていくきっかけになっていくはず。
7月2日にうお座から数えて「知覚の仕方」を意味する2番目のおひつじ座で下弦の月を迎えていくあなたもまた、他者や現実そのものを変えるのではなく自分自身の認識の仕方や知覚回路を変えることでリアリティを刷新していくことがテーマとなっていくでしょう。
「杖占」する人びと
「仮想の鬼ごっこ」は現代のテクノロジーを使った遊びでしたが、それとある意味で似たものとして、古くから伝わる卜占(偶然性を利用した占い)の一種で「杖占(つえうら)」と呼ばれるものがありました。
未知なる霊魂をの去来する辻(人の往来が多い十字路や分かれ道など)に杖をたてて、その倒れ方や倒れた方角に基づいて判断していく占いで、自分の進むべき道や方向性を、杖によって神意を間接的に知り、精霊の声をたずねいった訳です。
つまりこの場合、「鬼/人」を判別したGPSアプリの代わりに「杖」が生/死や現世/他界、あちら/こちら、内部/外部といったあわいの境界性そのものをシンボリックに表象している道具となっており、それが持ち出されてきた瞬間に、一種の道路標識の役割を果たすことで、何らかのかたちでリアリティの異化と変容が促されてきたのでしょう。
その意味で、今週のうお座も、かつてのお遍路さんや行商人、琵琶法師など、マージナル(境界や周縁)に生きた人々のように、変わりつつリアリティをなまなましく感じ取っていくことができるかも知れません。
うお座の今週のキーワード
卜占一閃