うお座
みっともなくも生きていく
こちらは5月24日週の占いです。5月31日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
少年ジャンプの夢
今週のうお座は、「有る程の少年ジャンプ抛げ入れよ」(中村安伸)という句のごとし。あるいは、滑稽と無惨とが相討ちしていくような星回り。
夏目漱石が三十代で早逝した大塚楠緒子の訃報に接して詠んだ「有る程の菊抛げ入れよ棺の中」を踏まえた一句。
楠緒子は漱石の思い人とされ、その衝撃の大きさは計り知れないものがあったようですが、掲句の場合は投げ入れる先が特に書かれていないので、単に授業中に読んでいて焼却炉に捨てさせられたか、はたまた。引っ越しに際して処分しただけのことなのかも知れません。
ただ、この「少年ジャンプ」という固有名詞は、ある特定の世代にとって、いち漫画連載雑誌以上の何かを意味しており、俗世にまみれきった今でも、少年時代の夢と鬱屈の記憶をその残酷なきらめきと共に思い出させるのです。
その意味で、実際の人死にに際して詠まれたものではなかったとしても、むしろそれゆえにこそ、掲句はどこまでも残酷な現実を突きつけてくるように思います。
26日にうお座から数えて「理想像」を意味する10番目のいて座で皆既月食(満月)を迎えていく今週のあなたもまた、叶わなかった願いのひとつに自分なりの見切りをつけていくことがテーマとなっていくのではないでしょうか。
「すべては真剣であり、ばかばかしくもある」
19世紀末フランスで活躍し、2度のタヒチ滞在を通じてプリミティヴィズムに強く影響を受けたポスト印象派の画家ゴーギャンは、最晩年に『ゴーガン私記』というエッセイ集を遺しています。
その中に「人生とは」という少々野暮ったい表題のエッセイがあり、冒頭で「人生とは、人がそれを意志的に実践するのでなければ、少なくともその人の意志の程度にしか、意味を持たないものだ、と私は考えている。美徳、善・悪などはことばである。もし人々が、それをひき砕いて建物を建てるのでなければ、(中略)意味を持たない」と述べています。
ずいぶん率直に物申す人だなと思っていると、唐突に「私は、愛したいと思いながら、それができない。私は愛すまいと思いながら、それができない」と告白してみせるのです。
彼は決して愚かではなかったものの、だからといって生き方がうまい訳でもなかったのでしょう。彼の文章はそんな特質を反映するように、まどろっこしく、不安定なのですが、それも少しの本音を隠すためのカモフラージュのように思えてきます。
今週のうお座もまた、そんなゴーギャンの「すべては真剣であり、ばかばかしくもある」生き様を取り入れてみるといいかも知れません。
今週のキーワード
死亡遊戯