うお座
魂の旅
帰るべき場所に帰る
今週のうお座は、宇田博作詞作曲の「北帰行」という歌謡曲のごとし。あるいは、根源的な哀しみに身を浸し直していくような星回り。
戦後うたごえ運動などを通して世に広まり、1961年に歌謡曲としてヒットした「北帰行」にも代表されるように、昭和のヒット曲を見ていくと、タイトルに「北」とつく曲がやたらと多いことに気が付きます。
北へ 帰る旅人ひとり 涙 流れてやまず
しかしゲルマン民族が南へ南へ憧れて、ゲーテにしろワーグナーにしろみんなオレンジがたわわに実るイタリアを旅したり、移住していったのに対して、ほとんど自虐的なまでにさらに北を目指そうとさえする、日本人のこの悲しい習性はいったい何なのでしょうか。
歴史を振り返ってみれば、義経も北へ逃れて奥州平泉へのがれましたし、死者たちの魂もまた北へと飛んで青森の恐山に集まったとされていました。
どうも光と生命感みなぎるものへの憧憬がロマンの源であったヨーロッパのゲルマン民族と違い、日本人にとっては山深き地に漂う霊気の希求こそがロマンの源であり、どこかで「やっぱり」と安堵に似た気持ちを起こさせる魂の原風景を有しているのかも知れません。
22日に自分自身の星座であるうお座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、ひとりの流浪の旅人になったつもりで、懐かしさを感じる場所やものへ惹きつけられていくことでしょう。
犬がほえたら穴をほる
では、いったい旅人は自分がどこへ向かい、魂のいかなる側面を活性化し、あるいはどんな相手と共に道中を歩んでいくべきかといった判断をどのように下していけばいいのか。
こうした旅をめぐる問いに関して、経験則はあまり役には立たないでしょう。それよりも大事になってくるのは「切なさ」への感度。つまり、地下の隠れた水脈のような、自分の中の声にならない声に耳を傾けることであり、じぶんやからだの中の理性に対する反乱分子の求めにひたすら従うことではないでしょうか。
例えば、昔話の「花咲か爺」であれば、犬のシロがわんわん鳴いた場所があったら、他の仕事を放りだしてすぐに穴を掘ってしまう訳です。現代社会ではまず大方の人がそんな行動には出ません。
けれど、あなたはそれをやるのです。理由や動機付けというのは、しょせん成り行きがあった上での後付けであって、大切なのは犬が鳴いたらとりあえず穴を掘ってみよう、という成り行きに賭けてみようとする気構えなのだと思います。
今週のキーワード
切なさを嗅ぎ付けろ