うお座
魔術的瞬間の力
めんこをひっくり返す感覚
今週のうお座は、めんこ遊びに興じる子供のごとし。あるいは、魔術的な破壊力に取りつかれていくような星回り。
今の子供たちにはカードバトル用に考案されたカードがもっぱら人気ですが、かつては大小、丸や四角、様々なめんこ(カード)があって、それらをただ原始的に地面にたたきつけることで相手のめんこをひっくり返すという遊びに興じていたものでした。
そして、ああした遊びになぜあんなにも夢中になっていたのかは、大人になって占いの仕事を始め、タロットカードがめくられる瞬間を真剣に凝視するたくさんの人たちに接することで、少し分かってきたように思います。
あれは、カードのカタチや絵柄、表された内容が大事なのではなくて、むしろ伏せられているものを「ひっくり返す」という操作が持つ魔術的なパワーに魅了されていたんです。
例えば、子供の頃に自分や家族の名前を逆さにして言ってみると、なんだか「自分らしさ」や「お母さんらしさ」が感じられなくなってしまって、怖くなってしまったことはないでしょうか。
これは物理的な上下と言葉の上下を同列に扱う未熟さゆえの感覚ではありますが、それだけでなく「ひっくり返す」ことでオモテからは見えていなかった意外な側面、本当らしいこととしてのウラが露わになり、すべてが変わってしまうということと根本的には通底している訳です。
6月21日にうお座から数えて「パワーの再生」を意味する5番目のかに座の初めで、日食と新月を迎えていく今のあなたもまた、既存の自分、古くなりパワーの落ちてきた自分を、いかに「ひっくり返す」ことができるかということが問われていくでしょう。
「非思量」ということ
禅の世界には「非思量」という用語があって、これは例えば中国・唐代の禅師・薬山惟儼(やくさんいげん)による次のような問答において記録されています。
ある時、薬山が深い瞑想状態で坐っていると、ひとりの僧がやってきて彼に尋ねた、「岩のようにじっと坐っていて、あなたは何を考えているのですか?」
師は答えた、「絶対的に思考できないものを考えている。」
僧「絶対的に思考できないものをどうして思考できるというのですか?」
師「非思考的思考、非思量によってだ!」
通常、人の意識というのはXであれ〇〇であれ、何かしらの"対象”を志向する在り方をしているものですが、座禅実践の第一の目的というのは意識の非志向的次元を探求することであり、その次元では人は異性との付き合いであれビジネスであれ何かを「志向する」ことのない純粋な活動体となりえる訳です。
だからといってもちろんここで座禅を勧めている訳ではありませんが、自分をひっくり返していく上では、こうした余計な雑音が消えていく「頭が消えていく感覚」へどれだけ迫っていけるかが一つの鍵となっていくように思います。
今週のキーワード
何も期待しないでただ物事をひっくり返す