うお座
増やすより減らす
普段着の自然体
今週のうお座は、「雀よりやすき姿や衣がへ」(広岡雪芝)という句のごとし。あるいは、重たい過去を整理して身も心も軽くしていこうとするような星回り。
5月に入って、日差しが明るく強くなり、すっかり気温も上昇してくる頃合いは「衣がへ」の時期であり、掲句はそれを終えて身も心もすっかり軽くなった人々について詠んでいるのでしょう。
それを表すために、「雀(すずめ)より気楽な姿」と小さく可愛らしい鳥を引き合いに出している訳です。確かに、たたずまいが端正な鶴であれば正装をイメージしてしまいますが、雀ならば温泉宿に行って浴衣に着替えるようなリラックスしたイメージを抱くから不思議なものです。
ただ立夏をすぎて新しい季節の兆しに気が付き、身に力を宿していくためには、まずそれまで自分を寒さから守ってくれた覆いを捨て去ることから始めなければならないのであって、さらに何かを付け加えるのは必ずその後でなければなりません。
だからここでは「鶴」ではなくて、「雀」でなければならなかったのです。
週明け早々の5月11日にうお座から数えて「先を見越した備え」を意味する11番目のやぎ座で、土星の逆行(常識の反転)が起きていく今週のあなたもまた、何かを得ようとがっつくのではなく、むしろ今の手持ちの荷物の何を捨てられるかをこそ熟慮していきたいところ。
無への通路
「身も心も軽くする」ということは、言い換えれば、「自分の中に無への通路を作る」(中沢新一)ということでもあるのかも知れません。
人間は、何かを所有したり、自分の地位や立場を獲得していくと、とたんに世界を小さくして所有しているような感覚を抱き始め、やがて天然や自然のままに自分を任せるということがよく分からなくなってしまう。
もちろんクレカや預金通帳、定住生活そのものを投げ捨てろといっても、ほとんどの現代人には無理な話ですが、一方でやはりどこかで人間死ぬときはひとり、生まれてくるときもひとりという感覚を持っておかないと、いのちというものが本来どのように存在しているのか(一切無所有)、分からなくなってしまうのだと思います。
「雀」も最近ではすっかり都心部で見なくなってしまいましたが、時おりにでもその佇まいを思い出し、あれくらい身軽な自然体に立ち戻っていきたいものですね。
今週のキーワード
余計な荷物が多すぎる