うお座
Who are You?
二律背反的感情
今週のうお座は、日野啓三の『雲海の裂け目』のごとし。あるいは、魂の‟裂け目”において何か得体の知れない光景を目撃していくような星回り。
作者は癌を患ったのち、病後はじめての旅行の帰り道、沖縄から東京へ向かう飛行機の上で、次のような光景を見たのだという。
「窓から外を眺め渡しているつもりが、次第に自分の意識の奥を覗き込んでいる気分になる。雲間から輝き出る光は、いまや朱色より強烈なオレンジ色に近い。赤や朱色よりエネルギーの高い色だ。私の意識の雲海の奥には、これほどのエネルギーが秘められているのだ、とほとんど信じかける。(中略)
荒涼と豪奢で、神秘的で自然で、生き生きと寂莫で、畏怖と恍惚の想いを区別できない」
ここで作者が見たこの世ならぬ光景は、人間である作者の存在そのもの、またはそれについての意識に直接つながっており、根源的でありつつもどこかそれを突き放した目線で観察できるがゆえに二律背反的な感情を作者にもたらしたのだろう。
先の引用箇所に先立って「夢の中でさえこの質の色は見たことがない」とさえ書いている。
7日にうお座から数えて「決意」を意味する9番目のさそり座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、日野の場合ほど劇的なものではないとしても、自身の真ん中を垂直に貫くようなひとつの啓示がもたらされていくかも知れない。
おのれを求むる
近代アメリカを代表する思想家エマーソンは「おのれを外に求むるなかれ」を座右の銘にしていたが、彼の著書『自己信頼』を読んでいると、その背景には彼が「自分にとって自分の心の奥で真実だと思えることは、万人も真実だと信じること―それが普遍的精神というものだ」と堅く信じていたことが大きかったことが分かってくる。
ここでそれをもう一歩押し進めるならば、たとえ自分以外の誰もがその背後に何も有意義な意味を見出さず、特別なことなど何もないと判断したものだとしても、他ならぬ自分自身がその背後に生起している力の気配や未来の胎動を確かに感じているならば、それこそ求むるべき「おのれ」に他ならないのだということ。
うお座にとって今週のウエサク満月はある種の「予感」がとても強まってくるタイミング。気を散らさず、ひとりの時間をしっかり確保して、自分の内面へと没入していくべし。
今週のキーワード
私が私で私だ