うお座
予感と選択
春雷と疼き
今週のうお座は、「ノートするは支那興亡史はるの雷」(鈴木しづ子)という句のごとし。すなわち、かすかな予感に打たれて身悶えしていくような星回り。
春の雷である「春雷(しゅんらい)」は、夏の雷とちがって激しく轟くことはなく、一つか二つかすかに走って鳴りやむことが多く、「虫出しの雷」とか単に「虫出し」などとも言うのだとか。
中国は日本とは比べ物にならないほどに、権謀術数渦巻く権力の興亡の歴史で知られており、実際「三国志」や「水滸伝」などの伝奇小説を入口にその魅力にハマるとなかなか抜け出せない魔窟のごとき面がある。
おそらく作者もそうした人間のひとりとなって、憑りつかれたようにノートに書き留めていたのだろう。そんなひと時の最中、作者の耳にふと遠くで鳴る雷の音が聞こえたのかもしれない。
その瞬間、遠い時代の異国の話であったはずのストーリーが、にわかに現在の自分が置かれた状況と混ざりあって不吉な予感に胸を突かれたか、書き込んでいた内容がまるで龍のように動いて目の前に立ち昇ってきたのか。
15日にうお座から数えて「社会にかける期待や望み」を意味する11番目のやぎ座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、あるいは何らかの形でスッと視界が遠くに開かれ、思いもかけないビジョンが飛び出てくるかも知れない。
夢うつつの境目で
それは寝入り際に夢うつつの境を通り過ぎていくときの感覚と言ったらいいだろうか。心の底から驚いているのだけど、どこかでそうなることが分かっていたかのような、じつに不思議な感覚。
さーっと鳥肌が立つような、首の後ろをシュワーっと電流が走っていくような、心は静かなのに思わず叫びだしたくなるような、そういう懐かしくも新鮮な感覚を今週あなたは体験していくことができるかも知れない。
ただし、それをただの‟棚ぼた”として何も考えずに享受して、即座に忘れてしまうのか。それともそうした儚い感覚を何度もなぞるようにして自分のものにしていくことで、自分の運命の流れを変えていこうとするかは、人によっておおいに分かれていくことになるはず。
あなたはそのどちらに転ぶのか。
今週のキーワード
歴史のつぼみ