うお座
カオス湧く春
春うらら
今週のうお座は、「天日のうつりて暗し蝌斗の水」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、自分でも訳の分からない大胆不敵さを発揮していくような星回り。
「蝌斗(くわと)」とは、おたまじゃくしのことで、春の季語。ここには現実の観察があると同時に、眩しい空間に湧いた不気味なカオスがある。
「天日」という固い響きの言葉が使われているのも、かえって真っ黒なおたまじゃくしが、びっしりとうごめく水中の暗さを引き立てている。
虚子は、俳句において「作者の地位は何処であるか」という問いに「作者は造物主と等しい全知全能で、天上から見ているものとすれば差し支えあるまい」と書いていたこともあるが、その意味で掲句は、全知全能の神が覚えた人間への一抹の恐れを活写したものとも言えるし、逆に自分の中の得体の知れない衝動のうごめきに戸惑っている人間の自画像なのかも知れない。
4月1日にうお座から数えて「創造ないし再誕」を意味する5番目のかに座で、上弦の月("型破り”のタイミング)を迎えていく今週のあなたもまた、自分の中になにか別種の生命が宿り、それが躍動していくさまを少なからず実感していくことになるだろう。
バッドトリップしないために
なんとなく車の後部座席に乗っていて、ハッと運転席を見ると、自分の嫌っているあいつ、心から憎んでいる存在が運転していた。そういう夢をみたことはある人は少なくないはず。
こうしたビジョンは、自分が生きてこなかった半面である「影(シャドー)」の典型的なイメージと言われているが、ある意味で、芸術家特有のひらめきというのは、そういう自分の中の嫌な部分、認めなくない側面とどう向き合っていけるかに懸かっているのだとも言えます。
ただし、だからとって今週あなたが急にいい人になる必要はありません。
自分のすぐ横で、嫌な部分、認めたくない側面の自分が意識のハンドルを握って運転していることもある。そういうこともあるのだと、なんとなくてでも分かりながら、やっていけるかどうか。
ひらめきを何かしら明日へと生かしていけるかどうかを分けるのは、そういうほんのちょっとした在り方の違いに他ならず、今週のうお座はそこを少なからず試されていくはず。
今週のキーワード
夢見の習熟