うお座
重力喪失!
翼を生やして
今週のうお座は、「春の家裏から押せば倒れけり」(和田悟朗)という句のごとし。あるいは、重いものをトンと軽く壊して前に進んでいくような星回り。
なんという薄っぺらな家かと思うけれど、人間がつくったものは家であれ制度であれ、あまり過信してはいけないし、あらかじめ「押せば倒れる」ものだと考えておくのは、ある意味で現実的な態度と言える。
ちなみに今手もとにある歳時記には「春の家」という言葉は入っておらず、おそらく伝統的な季語でもないだろう。
大地がぬかるんだ泥にかえり不安定になる春という語の感じを踏まえると、「春の家」の奥には上ずった感じのウキウキ感と、動かないはずのものが動いてしまうという驚きとが、ないまぜとなって同居しているように思われる。
一種の現代の、そして今の日本社会の寓話ともとれる一句だが、今のうお座であればこれくらいの感覚でいるくらいがちょうどいいのかも知れない。
3月3日にふたご座で上弦の月(行動の危機=今動いてナンボ)を迎えていく今週のあなたには、さながら重力を失ったかのように軽やかに既存の現実を飛び越えていってほしい!
「ムーンリバー」
ときどき、この世界で起きた何もかもが夢なんじゃないか、そんなふうに思えてくることはないでしょうか。
けれど、そんな時に見上げた夜空に浮かぶ月を見ていると、そのあまりの生々しさに心打たれて、これだけは間違いなくリアルなんじゃないかと思えてくる。他の何もかもが信じられなくても、これだけは信じてもいいのかも知れないと。
「ムーンリバー」を作詞したジョニー・マーサーも、おそらくそんな感覚を思い浮かべながら歌詞を書いたのではないかと思います。以下は曲の出だし部分の抜粋です。
「Moon river, wider than a mile(ムーン・リバー、この広く果てしない川よ) I’m crossing you in style some day(いつの日か、あなたを颯爽と渡ってみせる) Oh, dream maker, you heart breaker(ああ夢を見させもすれば、心を砕きもする) Wherever you’re going I’m going your way(あなたが行くところならどこへでも、私はついて行く)」
ここでは世の中の基準や、よいとか悪いとか決めつけられ、頭で意味づけられる以前のナマの世界に生きているもう一人の<私>として「ムーン・リバー」が登場してきているように思えます。今週のうお座もまた、そんな川の流れの一部となったつもりで過ごしてみるといいでしょう。
今週のキーワード
春の河