うお座
さなぎごっこ
「冬ごもり」とは何か
今週のうお座は、「くちびるで草紙かへすや冬ごもり」(建部涼袋)という句のごとし。あるいは、増殖しつつある魂をぬくぬくと感じていくような星回り。
江戸時代中期の俳人、小説家、国学者、絵師として多岐に渡って活躍した才人であり、還俗した元僧侶として各地を転々とした旅の人でもあった。しかし、掲句に出てくるのは炬燵で本を読んでいるひとりのものぐさな男の姿であり、そのギャップが妙に印象的な一句。
手を出すのが億劫なものだから、くちびるでページをめくっているのである。まるで、本を読んだことをきっかけに、さなぎになってしまったかのように。
折口信夫の弟子で、古典作品と現代文学との関係の究明に力を注いだ文芸評論家の山本健吉は、「冬ごもり」についてかつて次のように述べていました。
「「たまふり」の古義は、外来魂を密着させることである。「ふる」とは衝突し密着することで、「触れる」といふ意味を分化して来るが、「ふる」はまた「ふゆ(増)」でもあつて、魂が分裂し、増殖する意味が加はつてくる。その外来魂が附着し、新たな霊力が人間に加はる時期が「冬」であり、その来着を待つための物忌の状態が「冬籠」である。」(『柿本人麻呂』)
25日(土)にうお座から数えて「霊との一体化」を意味する12番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、さながら新たな形態を宿したさなぎのごとく、おのれを胎動させていきたいところです。
メタモルフォーゼの内実
結果として、みずがめ座での新月前後はしらばく断絶していた人間関係が修復されていったり、止まっていた時間が流れ始めたりといったことが起きてくるかも知れません。
英語の「nexus」という言葉には、連鎖とか結合体という意味があって、また「passage」には推移や通貨といった意味がありますが、今週のあなたはその二つの意味が交差しながら脈動していくようなところがあるのだとも言えます。
その中で、何か新たに関係を結んでいくようなエネルギーが生まれてきたり、それと同時に自動的に過去のデータを消去していったり、はたまたフォルダが整理されていくうちに、しばらく閲覧していなかったデータが、不意に浮上してきたり。
今週はもっぱら、そうしてしばらく開けていなかった頭の中の引き出しをあけ、血が通っていなかった部位に血を通していくことで、変化を引き起こしていくことになるはずです。
今週のキーワード
見えざるものと肩を組む感覚