うお座
ひとり豊かに
精神の総動員
今週のうお座は、「重き書は手近に置いて冬籠(ふゆごもり)」(佐藤紅録)という句のごとし。すなわち、焦点を定めることでエネルギーを総動員していくような星回り。
「重き書は」とあるので、それとは別にあまたの書物がこの家にはあるのでしょう。それで、普段なら軽いものをさらって後回しにしてきた「重き書」に、とりかからんとしている図。
辞書を手元に置いて頻繁に引いていることを意味するのかも知れないし、あるいは、ぶ厚く内容も重厚な一冊を、冬ごもりを好機として、読了しようと志しているのかも知れません。
いずれにせよ、この句の主人公は一見すると、ほとんど体を動かしてないように見えますが、その実、いつも以上に精神を大きく動かし、普段ならその手前で考えるのをやめてしまう領域のその先へ、意を決して足を延ばしていこうとしているのだと思います。
12日(木)にうお座から数えて「地に足をつける場所」を意味する4番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな句の主人公のように、何かに全身全霊を注ぎこむだけの対象を今まさに得つつあるのだと言えるでしょう。
「重き書」としての孤独
古今東西の詩人や宗教家たちは、真に価値あるものは深い孤独からしか生まれないと繰り返し説いてきました。
ですがそれは、本来とても豊かな孤独のことであって、現代における孤独は彼らが言及してきたものよりもずっと貧しいものになってしまったように思います。
例えば、20世紀における最も優れた詩人のひとりであろうライナー・マリア・リルケは、真に愛を育てるのは孤独で、恋する二人はお互いに孤独に耐えることで初めて、相手に対する愛を純粋に大きく育てていくことができる、と述べていました。
リルケは愛のない両親のもとに生まれ、陸軍学校の寄宿舎へ幼い頃から入れられて、人生の始まりにおいて孤独地獄を味わい尽くした人でしたから、これは何の不自由もなく幸福に育った人の寝言などでは決してなかったはず。
今週のあなたもまた、みずからの孤独に耐え、孤独を見つめることを通じて、少しずつでも孤独を豊かにしていくということを身をもって実践されてみるといいでしょう。
今週のキーワード
孤独にしかと根をおろす