うお座
発酵と腐敗のはざまで
「一番うまい」を探りあてるために
今週のうお座は、この世で一番うまい酒を作らんとしている杜氏のごとし。あるいは、「迎えにいく偶然」というプロセスを積み重ねていこうとするような星回り。
目に見えない菌によってもたらされる発酵のプロセスというものを、もし科学的にのみ捉えようとすれば、それは「一番うまい酒」というものも化学式で書けるに違いないとか、何らかのロジックで導き出せるはずだ、という発想になってくる訳ですが、実際には当然そんなことはありません。
なぜなら、発酵と腐敗の違いというのは、あくまで人間が人間の視点で決めたものであり、有益であれば発酵、有毒であれば腐敗であって、「一番うまい」という味の基準も人によって社会によって変わっていく。だから酒造りを追求していくと、生命工学的な観点だけでなく社会学的な観点も必要になってくる訳です。
つまり、自分を中心とした比較的多数の人がおいしいと感じる着地点みたいなところに、色んな試行錯誤やフィードバックの末に落ち着いていくというプロセスがどうしても必要になってくる。
そしてこのあたりの文脈こそ、まさに今週のうお座の人たちの星回りに通底していく部分なのではないかと思います。
うお座から数えて「身体知」を意味する2番目のおひつじ座で満月が起こるのが、14日(月)の早朝。今週はそこへ向けて、「世界一うまい」感じを自分なりに探ってみるといいでしょう。
2つのセレンディピティ
幸運な偶然の発見や出会いを意味するセレンディピティには「やってくる偶然」と「迎えにいく偶然」の2つがあるそうですが、「一番うまい酒を作る」という設定からして無茶な試みを実現していくためには、後者のような偶然が必要となっていくはずです。
これはどういうものかと言うと、自分なりの意志や意図を持って変化を作り出し、そこで偶然に出会おうとするような場合を言います。すなわち、何らかの仮説をもって、あるいは心の準備をしていくことで、必然的な偶然への察知能力を上げていくということ。
これは「棚からぼたもち(やってくる偶然)」的なラッキーだけを追おうとする態度とは明らかに異なっており、セレンディピティというものがある種の経験値に基づく「能力」という意味合いを含んでいる由縁でもあります。
自分なりの仮説に基づき、このあたりかなと掘り進めていった先で、当初の目的と一緒に芋ずる式に一緒になって取れたものの方が‟当たり”だった。うまくいけば、今週はそんな風にして自分なりの「一番うまい」勘所を探りあてていくことができるでしょう。
今週のキーワード
迎えにいく偶然