うお座
瞬間という聖地
青空の向こう側
今週のうお座は、さながらターミネーターの登場シーンのごとし。あるいは、まったき処女地としてこの世界を踏みしめていくような星回り。
人や物が大いに動く「あきない」を語源にもつ「あき」に季節が移ってくると、高く澄んだ青空が身近に感じられて、まるで、通り抜けられそうに感じられてくることがある。
自分が空の向こう側の世界へ突き抜けてしまうのか、それとも、青空を突き抜けてこちらの世界になにか未知のものがすっと訪れてくるのか。
そういえば、ターミネーターもそんな感じで、ゴミの散らばった路地裏にまばゆい電光とともに何の脈絡もなく降り立ったものだった。
映画の内容を知っている人であれば、人類と機械が熾烈な戦いを繰り広げられている近未来において、人類反乱軍のリーダーとその母親を抹殺するため、過去世界へ転送された殺戮マシーンであることは知っていよう。
けれど、それもすべては後付けに過ぎず、当のその瞬間には、ただ全裸男が突然そこに出現しただけだったはず。
中秋の名月を過ぎ、22日(日)に下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、過去や未来の「いつかどこか」のために現在ををやり過ごしているモードから、<今ここ>の瞬間に集中するモードへと一時でも切り替えていくことがテーマとなっていくでしょう。
1分間の行
とはいえ、瞬間に生きるということは、実際にやってみようとするとなかなかに難しいことです。かつてモンテーニュもまた『エセー』の中で次のように述べてています。
「ぼくたちはすこしも自分のもとにいないで、つねに自分の向こう側に存在する。不安や欲望や希望がぼくたちを未来の方へ押しやり、ぼくたちから、現に(今この瞬間に)存在していることについての感覚や考慮を奪い去る」
おそらく、タイムマシンで都合よく過去や未来を書き換えるなんてことは結局できはしないだろうし、空の向こう側の世界へ突き抜けようが、逆に何かが空をこちら側に突き抜けてこようが、それはやはり自分自身なのではないでしょうか。
手元のコーヒーカップ、窓の向こうに広がる街並み、観葉植物の葉の緑、あるいは心臓の鼓動など、今いる場所や目の前の光景のどれか一点に焦点を定め、1分間でも構わないので、ただただ静かに見つめてみてください。
自分が、どれだけ今この瞬間の光景に、立ち会う準備ができているか。心が落ち着く時間帯を見つけて、ぜひ確かめてみるといいでしょう。
今週のキーワード
「よそ」ではなく「ここ」にただ、イル。