うお座
すべてが変わりつつあるという予感
影にたずねる
今週のうお座は、「影占いかがみて遠き地の音叉」(九堂夜想)という句のごとし。あるいは、結びつきの中で自分を試していくような星回り。
「影占い」という名称の占いを実践している訳ではあるまい。地面に何かの影が映っていることに気を留め、かがんで確かめているのだ。何を? どこか遠き地の様子を。
物理的にも精神的にも隔絶した遠くの天上世界から、この世の動向を気にして伺っているのかもしれない。そんな想像を思わず掻き立ててくるような句だ。
こういう句はバラバラに分解して単語の意味するところをひとつひとつ問いただしても、そこから句全体の“真の意味”など決して見えてこないだろう。
仏教や神道などで扱うお経や祝詞というのもそういうところがあって、何度も何度も繰り返して唱えているうちにふっと腑に落ちてくる瞬間があって、それは実際に自分のからだに馴染ませていくプロセスの先で初めて起こり得る。
そして今のあなたの置かれている状況もまた、どこかそうした掲句の世界と通底していくように思います。
つまり、自分がいま影響を受けている考え方だったり繋がっている対象というのが、自分に一体どんな世界を見せようとしてくれているのか、頭とは別の部分で確かめようとしているような、そんな構えだ。
断層に出逢う
人間も大地と同じで、幾層にも重なった地層によってできており、長いこと歩き続けていれば突如としてはるか古代の地層の断面ががばりと露呈してくることがあります。
当然そこで、それまでとは何かが変わる。
例えば、信州から10代半ばでほとんど家を追い出されるようにして江戸へ流れ着いた小林一茶などは、40歳を超えてはじめて自分の中に眠っていたものが表面に出てきて、「秋の風乞食は我を見くらぶる」などの露骨な貧乏句を作るようになったり、他にも奇妙な変わり様を見せて周囲を困惑させました。
こうした変化について藤沢周平の『一茶』では、一茶の世話役をしていた夏目成美(なつめせいび)をして次のように語らせました。
「これを要するに、あなたはご自分の肉声を出してきたということでしょうな。中にかすかに信濃の百姓の地声がまじっている。そこのところが、じつに面白い。うまく行けばほかに真似てのない、あなた独自の句境がひらける楽しみがある。しかし下手をすれば、俗に堕ちてそれだけで終るという恐れもある。わたくしはそのように見ました」
そういうことは、誰にでもあり得るのです。今週は、一茶とのやり取りの中で発せられた成美の言葉をよくよく胸に刻んでおくといいでしょう。
今週のキーワード
窯変