うお座
反復と燃焼
あいだを生きる
今週のうお座は、「輪に入りてすぐ影が添ふ盆踊」(三好潤子)という句のごとし。あるいは、醒めた眼と昂ぶる心のあいだを、行き来していくような星回り。
掲句には、昂ぶる自分を見つめているもう1人の自分がいる。みずからの女性性にまとわりつく数多の縁や欲をみつめる作者の眼は、醒めていれば醒めているほどに淋しく悲しい。
その淋しさや悲しさは、昂ぶる心に身を任すことでかろうじて癒されるのだろう。醒めた眼から昂ぶる心へ、そしてまた昂ぶる心から醒めた眼へ。こうした反復を繰り返しながら、その繰り返しのたびに、命の輝きとも言うべき生の実感を、この俳人は燃焼させていきました。
今のあなたはどちらかと言えば、心の昂ぶりを感じているかもしれませんね。ですが一方で、自らの悲しき性を照らしだす月光のごときまなざしに酔う心地良さも知っている。
両者のあいだを行き来し、反復していくことで得られる生の実感を、命の燃焼のその手触りを、今週は肌で感じていきましょう。
今のあなたならそれができるはずです。
頽廃ではなく頽落
21歳で夭逝した作家・久坂葉子の遺したノートには、以下のような書き付けがありました。
「あらわにみいだせること― わがみちは 浪漫―孤絶―虚無―頽廃 この四期のくりかへし。」
孤絶のところには、横に「詩」と書いて〇がしてありましたが、彼女のような詩人の魂をもった人であっても、反復し続けていくということは並大抵の選択ではなかったのかもしれません。
例えば、頽廃(たいはい)ではなく、頽落(たいらく)という道を行けたら―。
つまり、堕落とか頽廃とかそういった感傷的な自暴自棄にいたるのではなく、読書に耽り、日常のこまごまとした景色に溺れ、夢中になって没入して生きていく自分を許せていたら、違っていたのではないか。ふとそんなことを考えてしまいます。
今週のあなたは、何を繰り返しながら生きていくのか、その選択肢を改めて見定めていこうとしているのだとも言えます。
今週のキーワード
Verfallen(頽廃)