てんびん座
孤独であるがゆえに人は優しくなれる
共有へ向けて
今週のてんびん座は、「そら豆剥き終らば母に別れ告げむ」(吉野義子)という句のごとし。あるいは、前を向いて生きていくために、奥歯にはさまったものを取り除こうとしていくような星回り。
久しぶりに実家へ帰ってきた娘が、老いた母の元を立ち去りがたく思った結果、ついにそら豆を剥き終わったら帰ろうと決意している。句意としてはそんなところだろうか。
何のための帰省なのかは知らない。もしかしたら、本当は言いたかったけれどついに言いだせずに終わってしまった話があったのかもしれない。いずれにせよ、きれいなみどり色をした大粒のそら豆を残して、娘は自分の生活へと再び帰っていくのだ。
父と息子であれば、そら豆など剥くこともなく、素っ気ない別れの言葉を交わす程度でさっさ帰っていったであろう。言うに言えない言葉まで伝えようとして、グズグズしてしまうところなどは、母と娘という関係性に宿る特異な情念性と言えるかもしれない。
今週のあなたもまた、自分ひとりではうまく処理しきれない問題を誰かと共有しようと悪戦苦闘していくことになりそうです。
引力をどこに感じてる?
「万有引力とはひき合う孤独の力である」と谷川俊太郎さんは書いていました。でも、互いに自然とひき合っていることを認めるのは実際にはとても難しい。
というのも、電車に乗れば「脱毛」「エステ」「整形」「英会話」など、さまざまな車内広告を通じて欲望を煽られ、日々さまざまなメディアであれをしろここに行かねばと、いろんなものを受信しまくりながら生きていると、いつの間にか足元がお留守になって、どこに立っているのか忘れてしまうからです。
あなたはどこに立っていて、その足元はどこに引っ張られているのか。そういうことというのは、誰かにゆっくりそら豆を剥いてあげたりなどしない限り、なかなか気づけないんですよね。
自然と引力を感じる方向がどこなのか、自分の手や足を通してしっかりと感じていきましょう。
今週のてんびん座へのキーワード
そら豆を剥く