てんびん座
涼風と鬼
テープを舞い上げたのは誰?
今週のてんびん座は、『どの子にも涼しく風の吹く日かな』(飯田龍太)という句のごとし。あるいは、月並みな予定調和をあえて突き破っていこうとするような星回り。
日本の夏はとにかく蒸し暑いものと決まっており、作者が拠点を置いていた甲府盆地も酷い酷暑で有名ですが、掲句がつくられた時たまたま一日涼しい風が吹いていたのでしょう。
そしてその涼しい風が、外で真っ黒に日焼けするまで遊んでいる子どもたちひとりひとりに平等に吹いたというのです。句の大意そのものはいたってシンプルではありますが、掲句からはどこか昔ながらの村落共同体に垣間見られるような明るく健やかな印象を受けるのと同時に、人間の頭で考えたような作りものの「平等」をサーっと突き放してくれるような、はるか超越した世界からの霊威のようなものも感じます。
そうした人間的な配慮や気遣いとはかけ離れたところで吹いた風を受けた子どもたちは、間違っても徒競走でゴールする際に、手をつないで横一列でゴールするようなバカげた真似をすることはないはず。
むしろ、レースの結果には理不尽なまでに個人差がついてしまうかも知れませんが、しかし、涼しい風は同一の競技だけでそれぞれに個性の異なる人間の価値を十把一からげに判断するような座組みそのものも解体していくのではないでしょうか。
7月12日にてんびん座から数えて「横のつながり」を意味する11番目のしし座に金星(平和と調和)が入っていく今週のあなたもまた、過剰な同調や帳尻合わせを迫られる人間関係からおのずと離れていくことになりそうです。
神さまの2つの型
日本の神々というのは主に2つの型が結びつくことから成り立っていて、ひとつは人間世界の中心部に鎮座していて、大きな神社のご神木や鎮守の森のように、共同体の価値を守り秩序を維持する働きをしています。
そしてもう一つの型が、人間世界の外側からやってきては、手垢のついた価値体系に組み込まれていない非人間領域の力を内部に運び込んでくる役目を担っています。
この2つ目の型の神さまは、1つ目の型の神さまのようにどこかに常住することがなく、時を定めて出現し、役目を終えると人間世界の外に去って行ったのだと言います。こうした神々はしばしば異形の姿で象られ、「鬼」とも呼ばれてきました。
その意味で、夏場にどこからか吹いてくる「涼風」というのも、現代における鬼であり、来訪神のひとつなのだと言えるかも知れません。
今週のてんびん座もまた、普段なら従ってしまうだろう常識や判断基準をいったん棚上げしていくようなつもりで過ごすくらいでちょうどいいでしょう。
てんびん座の今週のキーワード
異質な力に感応していくこと