てんびん座
ひとつのサイン
穏やかな春こそが
今週のてんびん座は、『地球儀のいささか自転春の地震(ない)』(原子公平)という句のごとし。あるいは、今後の浮き沈みを分ける分水嶺に直面していくような星回り。
「なゐ」は地震の古語。不意にぐらっときたところで、少し離れた棚の上に飾られた地球儀が「いささか」、すなわちかすかに回っているのが見えた。かすかとは言っても、地球儀が勝手に動いてしまうくらいだから、そんなに小さな揺れではないはず。
そして、地上に生きるものにとっての「地震」のように、まったく予期できない仕方で不意に訪れてくるのが「春」という季節なのではないでしょうか。考えてみれば、四季の中でも私たち人間のこころを最も穏やかにさせてくれる春こそが、いちばん人間の側の想像や経験を超える仕方でやってくるという事実は、なんとも不思議な納得感があります。
首を長くして待っている時にはやたらとやってくるのが遅く感じたり、やってこなかったりするのに、「地球儀」の回転に気づいた時にはあっという間に兆しどころか、盛りになっていたりする。それが春。
きっと、こうした春の捉え難さというのは、はるか昔の人間にとっては厳しい冬を生き延びることの困難とそのまま直結していたのでしょう。その意味で、2月10日にてんびん座から数えて「再誕」を意味する5番目のみずがめ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どんなにかすかな兆しやシグナルであってもできるだけキャッチしていきたいところです。
「縁が熟す」ということ
正確な出典は忘れてしまったのですが、かつて日本にユング心理学を紹介した心理療法家の河合隼雄が、「なおる気のない人は、なおる気が起こるまで待ってもらう」というようなことを書いていました。
これは神経症であれノイローゼであれ、何らかのニューロティックな症状があらわれた患者というのは、いわば「選ばれている」人であり、意識を越えた世界から1つのサイン(例えば「夢」のような)をもらっている訳ですが、そうしたサインを大事にして、かつその意味するところを究明したいと自然に思えるまでにはある程度時間がかかる。時間をかけて、症状を乗り越える力を培っていく。逆に言えば、そういう力のない人に、夢分析などしても気の毒なだけだと言うんですね。
つまり、患者の方でも療法家との「合い性」や「縁」がなかったらだめで、時には最初に分析を断ってから2年か3年たってやっと「縁が熟す」ということだって珍しくないのだ、と。これは、突然やって来る「春の地震」とも通じるところがあるのではないでしょうか。
その意味で、今週のてんびん座は、ぜんぜん自分がコントロールできない予期しないところで「縁」というものの不思議を実感していくことになるかも知れません。
てんびん座の今週のキーワード
それは必ず、こちらの想像を超える仕方でやってくる