てんびん座
もしもし、神さまですか?
人は聴覚から気がふれる
今週のてんびん座は、『水澄むやあとはバトミントンでいい』(宮本佳世乃)という句のごとし。あるいは、透明な交わりをたぐり寄せていくような星回り。
秋は大気が澄み渡るだけでなく、水もまた透明感が増して感じられてきます。そんな風景のなかでバトミントンという割と気力と体力のいる遊びを、どこか子供じみた言い方で要求してこちらを困らせ、笑っている。
これは一体だれなのだろうか。普通なら、甘えが許される関係にある恋人やパートナーと考えるところですが、おそらくそうではないのでしょう。
どこまでも澄んだ水とともに、その存在までもが透き通ってしまっているかのようなその相手は、大人になると見えなくなってしまう子どもの頃のイマジナリーフレンドや、記憶の彼方の古い友だちなのかも知れません。
「あとはバトミントンでいい」という口語体も、視覚というよりむしろ聴覚によってやっとその存在を感じ取れる相手であることの強調だと捉えることもできるはず。
その意味で、10日にてんびん座から数えて「イコールパートナーシップ」を意味する7番目のおひつじ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな記憶の彼方の相手を呼び出していくことになるでしょう。
ケボカイの儀式
透明な相手との儀式的やり取りということで思い出されるのは、古来よりの仕方での狩猟を専門とするマタギの存在でしょう。彼らは「山は山神様が支配する領域であり、クマは山神様からの授かり物」であると信じており、獲物を授かるため神に向けて行う儀式を大切にします。
特に大切にされているのは「ケボカイの儀式」というもので、これは射ち獲ったクマの頭を北に向け、左の足を下にして仰向けにし、塩をふって唱え言葉を三度繰り返すという神事で、これは「あなたを必要とします」という本心からの言葉を体現したものと言えます。
翻って、現代社会に生きる私たちは既に殺された牛や豚、鶏、魚たちをお店でお金と交換することでいのちを繋いでいる訳ですが、その度に自然に向けてみずから儀式をする人はほぼいないでしょう。常日頃は忘れてしまっていますが、私たちはみな殺戮者の子孫であり、すべての人間には自然やこの世界に育ててもらった「借り」があるのです。
今週のてんびん座もまた、自分の欲望が自然なギブ&テイクの循環サイクルにおいてどれくらい適切なものなのか、いったん人間界の常識を離れて考え直してみるといいかも知れません。
てんびん座の今週のキーワード
欲望を整える