てんびん座
振る舞いがすべてを物語る
儀式におのれを込める
今週のてんびん座は、「さみだれや仏の花を捨に出る」(与謝蕪村)というのごとし。あるいは、日常に儀式性を取り戻していこうとするような星回り。
ここで「仏の花」は死者の存在を暗示しています。雨の季節はジメジメとしていて花が傷みやすいので、仏壇にそなえる新鮮な花をどこかで折りとって来なければなりません。
つまり、掲句ではまだ生きている生者と、すでに亡くなっている死者との交流を詠んでいる訳です。しかし花を奉るのはじつのところ生者のためでもあるのです。
それは、やがて自分もかつての生者が死者となったように、かならず死にゆくという事実そのものによってもたらされる、自分自身への戒めと自己浄化のための儀式のようなものなのだと言えるかも知れません。
しかし、こうした他者への振る舞いにおける儀式性というものを、現代の私たちはそのほとんどを失ってしまったようにも思います。
7月2日にてんびん座から数えて「鏡」を意味する7番目のおひつじ座で下弦の月を迎えていくあなたもまた、誰かのためであると同時に自分のためでもあるような行動を大切に取り扱っていきたいところです。
タレス先生の言行一致
古代ギリシャの哲学者タレスは、紀元前585年の日食を予言して見事的中させた話などで有名な人類史上でも第一級の碩学ですが、プラトンの『テアイトス』にはタレスが頭上の星に気を取られて空の井戸に落っこちて、下女にからかわれた話が出てきて、星の学徒としてはむしろこうしたエピソードを通して、気の毒やらおかしいのやら、彼に親しみを感じて行く人が多いでしょう。
おそらく井戸の底に落っこちた際、タレスの眼前には先程とは違った意味での星が見えていたことと思われますが、あるいはこれは単なる人間味あるエピソードというより、宇宙万有の生成変化の大元にある原理を「水」で説明し、「大地は水の上に横たわる」という言葉を遺したとされる彼の思想の寓話的表現であったのかも知れません。
いずれにせよ、何かを人生をかけて考えていけば、必然的に本人の生き様や具体的にエピソードにも本人の思想や哲学が反映されていくということはそう珍しいことではないはず。
今週のてんびん座もまた、自分のテーマを寓話的に表現するなら、それはどんな儀式的出来事となるのか、改めて考えてみるといいでしょう。
てんびん座の今週のキーワード
「万物は神々に充ちている」(タレス)