てんびん座
自己内対話の促進
内的実感の加速化
今週のてんびん座は、「草二本だけ生えてゐる 時間」(富澤赤黄男)という句のごとし。あるいは、しずかに何か誰かと向き合っていく時間を過ごしていくような星回り。
掲句は、現在ではあまり使われなくなった「分かち書き」と呼ばれる、一文字の空白によって切れが作られており、視覚的な効果もあいまってその断絶はより一層強調されている。
すなわち、「時間」には決して手の届かない、永遠の停止を強いられたかのような場所で「草」はその生を余儀なくされているのだ。必然、そこは荒れ果てたむき出しの大地や、灼熱のアスファルトとして連想されてくる。
もしも「草」が一本だったなら、その絶望的な孤独や耐えがたい状況にすぐさま潰されてしまっただろうが、二本ならばそこに何らかの関係が生まれ、それが希望へと変わっていくかも知れないという予感を抱く余地は残されている。
それとも、草が二本そろえば、それは否が応でも「時間」の流れを欲し、良きにつけ悪しきにつけ、縁の終局地点へとみずからを手繰り寄せていくということなのかも知れない。
11日から12日にかけて、てんびん座から数えて「どうしても必要なもの」を意味する8番目のおうし座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そばにある誰かであれ、縁の進展であれ、いま自分が最も望んでいるものが何なのかが浮き彫りになっていくだろう。
ひとりの友
人生は長い自問自答、「わたしが」と「わたしを」が熱中している対話のようなものと言えるかも知れない。
何を見ても、誰と会っていたとしても、私たちは心の中で彼らの会話を聞き続けているし、逆に言えば彼らの会話以外のものをほとんど聞いていないのだ。
でもだからこそ、私たちは人生の半ばを迎えると、彼らの対話が深い奈落の底に沈み込んでしまわぬように、そこへ割って入ってくれる「浮き」のような存在を自然と求めていく。ニーチェならそれを「ひとりの友」と呼んだことだろう。
今のあなたには、そんな「ひとりの友」はいるだろうか?
あるいは、相手の奴隷でもなければ専制君主でもなく、推察と沈黙にすぐれた、傍らにある純粋な孤独であり、澄み切った大気であり、透徹したまなざしであるところの者に、あなた自身はなり得ているか。
どうも今週は、そうした日ごろからの自分自身との関わり方を質を改めて見極めていく期間になっていきそうだ。
今週のキーワード
時間か、他者か