てんびん座
見えない心に目を凝らす
青葉の頃
今週のてんびん座は、牟礼慶子の「見えない季節」という詩のごとし。あるいは、自分をつかみとっていくための苦闘に価値を与えていこうとするような星回り。
「できるなら 日々のくらさを 土のくらさに
似せてはいけないでしょうか」
(『魂の領分』)
という呟きとも悲鳴ともつかない独白から始まるこの詩は、盲目的な発達においてありあまる活力と幼稚さと意地と傷つきやすさがせめぎ合っていく、誰もが経験するだろう思春期について詠まれたものです。
青春というのは、後から振り返ったときにのみ「美しい」と言えるもので、その最中は大変に苦しく暗いものでしょう。しかし、それでも作者はこう続けます。
「ともあれ くらい土の中では
やがて来る華麗な祝祭のために
数かぎりないものたちが生きているのです」
週明け5月11日にてんびん座から数えて「動機と基盤」を意味する4番目のやぎ座で、土星の逆行(常識の反転)が起きていく今週のあなたにおいてもまた、いま感じている意気消沈や内なる暗さや違和感を、「チューリップの青い芽」がぐんと伸びていくための前触れとして捉えて、少しでもその肥やしにしていけるかどうかが焦点となっていくでしょう。
暗闇に星座を結ぶように我を知る
偉大なる人文学者であり占星術家でもあったマルシリオ・フィチーノは、彼のパトロンであるロレンツォ・メディチへ宛てた手紙に次のように書いていました。
「私たちは内面に全天空を持っています。それは私たちの火のような強さであり、神々しい起源です。月は魂と身体のたえまない動きを象徴しています。火星は勢いを、土星は鈍さを、太陽は神を、木星は法を、水星は理性を、金星は愛を象徴しているのです。」
こうした天との一致した生を生きんとすることを方法とした占星術においては、「汝自身を知れ」は「内なる星を知れ」と同じ意味とされていました。
そこでは暗闇のなかで光る点と点を結んだ星座は、決して気まぐれや偶然によって結ばれた訳ではなく、その一つひとつがおそらく何度も何度も人々の想像力が上書きされていく中でやっと繋がれていった希望であり、生きる原動力そのものであったはずです。
今週はそうして想像力の痕跡を自分なりになぞっていくことで、他ならぬ自分自身の原動力をすこしでも象り、明確にしていきたいところです。
今週のキーワード
小宇宙の調律