てんびん座
まとまることへの拒絶
違和の信号
今週のてんびん座は、「ちぐはぐ」という言葉のごとし。あるいは、自分の中で淀んでいた曖昧なものが痛みを伴って暴れはじめるような星回り。
「ち」という音は内にこもっている軋むようなきつい音で、「ちくり」と人の心を刺すような棘があり、それが「ねちねち」としつこく続いて業を煮やしてくると、やがて内心は「しっちゃかめっちゃか」になるほどの混乱状態へと陥っていく。
そうして、これまでの一貫性や持続性、落ち着きがばらばらになるほどの破れ目が目につくようになったさまを「ちぐはぐ」と言ったりするが、それはただただネガティブで未熟な心模様を表すだけでなく、小さくまとまることへの拒絶を孕んでいるのではないか。
統一がないということは、暗闇を裂く木漏れ日が射していたり、それにまばゆい光の痛さを感じているということでもあって、「ちかちか」とした眩しさや「ちりちり」としたむず痒さのように、自分の位相がズレていく際に湧きあがってくる感覚に他ならない。
5月1日にてんびん座から数えて「連帯と融合」を意味する8番目のおうし座で、水星(自覚)が天王星(失望)と重なっていく今週のあなたもまた、これまでの繋がり方や自分の位置づけ方に対してどこかしら違和感を覚えていくいことになるはず。くれぐれもそうしたシグナルを無視しないようにしていきたい。
一茶の「ちぐはぐ」
それは自分の夢はやはりここにはなかった、他人に託せないのだと悟ったり、かえって自分の火を猛らせていく契機となる。
例えば、松尾芭蕉、与謝蕪村と並んで江戸時代の三大俳人として知られる小林一茶。彼について描いた藤沢周平の『一茶』には次のような描写が出てくる。
「言いたいことが、胸の中にふくらんできて堪えられなくなったと感じたのが、二、三年前だった。江戸の隅に、日日の糧に困らないほどの暮らしを立てたいという小さなのぞみのために、一茶は長い間、言いたいこともじっと胸にしまい、まわりに気を遣い、頭をさげて過ごしてきたのだ。その辛抱が、胸の中にしまっておけないほどにたまっていた。
だが、もういいだろうと一茶は不意に思ったのだ。四十を過ぎたときである。のぞみが近づいてきたわけではなかった。若いころ、少し辛抱すればじきに手に入りそうに思えたそれは、むしろかたくなに遠ざかりつつあった。それならば言わせてもらってもいいだろう、何十年も我慢してきたのだ、と一茶は思ったのである。」
一茶もまた「ちぐはぐ」な自分を生きていた人だったことが分かるのではないか。この頃に詠んだ「秋の風乞食は我を見くらぶる」という句からは、その現場の生々しさが痛いほどに伝わってくる。上手いとか下手とかではない、もっと内側から押し出してくるようなものを、あなたも今週は押さえきれず衝きあげていくことになるかも知れない。
今週のキーワード
違和感が爆ぜる