てんびん座
充実と革命
一瞬の充実
今週のてんびん座は、「ひんやりと手鞠に待たれをりにけり」(阪西敦子)という句のごとし。あるいは、落ち着いて心を込めて、何か誰かと対していくような星回り。
「ひんやりと」という冒頭の一語が、音楽の流れの中に置かれた休止符のように効いている句。
「手鞠」は本来なら正月遊びの新年の季語なのですが、10月28日に自分の星座から数えて5番目(「生まれ変わり」を意味する)のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週のてんびん座には、それくらいのしーんと張りつめた空気感の変化を感じ取ってほしいのです。
掲句では、「手鞠」と私とが一対一で向かいあっており、ともに冷えている。作者は、そういった一瞬を、世界の在り方を、とても充実したものと感じているのでしょう。
遠い子供の日々、鞠をつきながら覚えた歌が、その沈黙の奥から再び聞こえてきそうでもあり、実際にそういう時はとりあえずやってみると体で覚えていたりする。
頭ではどうしたらいいか分からなくても、空気の変化を感じとる皮膚や、動きの中で記憶を再生させる身体に任せることさえできれば、それで十分事足りる。
今週のてんびん座は、そうした実践的な知恵をいかに運用していけるかがテーマになっていきそうです。
静かな革命
誰かを「敬う」ということは、その相手の後ろ姿に心から「うなづく」ことができるということでもあります。それは簡単なようで難しい。なぜなら「絶対に正しいこと」などこの世にないように、相手をまったく疑わない人間もまた存在しないからです。
だからこそ優れた師というのは、弟子に「それはなぜそうするのですか?」と聞かれても、しばらく前方を見つめて、うなずいてから、余計な説明を入れず無言を貫く訳です。
これは、「ああなってこうなって、こうなるんだ」と言葉で説明しようとしても、どれも正確には表現し切れないため。優れた師であるほど、そのことに自覚的であるがゆえに、沈黙を大事にするものなのです。
しかし、それがかえって弟子に革命を引き起こす。こうした接し方や対し方をめぐる不思議というものがあるのだということも知っておくといいでしょう。
それを踏まえた上で、「これは」と思う相手がいた時こそ、今週はまずその後ろ姿にうなづいてみること、そして無言の教えを大切にすることの2つを、あらためて思い出してみてください。
今週のキーワード
心の休止符としての沈黙