てんびん座
自己開示の鬼となる
開けゴマ!
今週のてんびん座は、さながら心の底に強い圧力をかけてしまってある言葉の蔵を開門する呪文のごとし。あるいは、誰の眼にも触れず、激しく燃え続けている自分自身の姿を明らかにしていくような星回り。
人には、誰かほかの者にうまく伝えようとしても、どうしても思ったように伝わらない話というものがある。
例えば、幼い頃の家族に関する話や印象的だった夢の話などがそうで、言葉にした途端に色褪せて、なんだか平凡に感じられて白けてしまうのだ。こんなはずではないのに、と。
大抵、そうなってしまうのには理由がある。
大まかの描写はできたとしても、体験の核心部分にある、それによって自分が生かしめられているところの決定的な思念、ないし、自分の内面世界の圧の中でしか生きられぬところの言葉だけは、口にしたくないし、文字にも記したくないからだ。
こんなのは自分じゃない、誰かほかの人の思念が入り込んできたのに過ぎない―。
そんなふうに激しく感情が掻き立てられる思念や言葉こそ、根本のところで自分を支えくれている存在の核(コア)なのだと、今週は思いいたることがあるかもしれません。
大胆な表明を
ニーチェは『人間的、あまりに人間的な』の「軽蔑の火のなかで」という断章のなかで、彼なりの自己実現法を次のように示している。
「自分の不名誉になるような考えを最初に大胆に表明することは、自立への第一歩になる」
端的な言葉だが、まさに今週のてんびん座への指針をそのまま表しているように思える。
当然、そうした表明を行えば、ちょっとした知り合いは場合によっては離れていくだろうし、Twitterならフォロワー数は激減するだろう。しかし、とニーチェは続ける。
「能力に恵まれた者なら、この火の中をくぐり抜けなければならない。そうすることで、彼はよりいっそう彼らしくなっていく」
これは彼の箴言集の執筆方針であったのだろう。彼ほど苛烈にこうした指針を貫き通せる人はまれだが、今週のてんびん座人ならば少しでも近づいていきたいところだ。
今週のキーワード
人間的、あまりに人間的な