しし座
惰性を超えていく
日傘のうちに何をかくまう
今週のしし座は、「激動の昭和を生きて白日傘」(山田歌子)という句のごとし。あるいは、自分が心から守り抜きたいものを手に握りしめていくような星回り。
「激動の昭和」という表現は一種の慣用句のようになっていますが、実際「戦争と敗戦・民主化・高度経済成長」など、多くの犠牲を払いながらも、日本が生まれ変わっていった「昭和」はたしかに動乱と激動の時代でした。
ただ、動乱と激動という意味では、ここのところのしし座も負けていないのではないでしょうか。
歴史という荒波の中で、名を残すこともなく消えていった数々の出来事やいのちと同様に、あなたの中でも、飲み込まれていった言葉や、はっきりと意識されることなく沈んでいった感情の残骸が、今でも心の奥底に漂っているはずです。
強すぎる日差しをさえぎって、そっと抱えるように日傘のうちにかくまう人のように。今週のあなたもまた、まだギリギリのところで形をとどめている言葉や感情の残骸から、これはと思うものを選んで掬いとっていくことになるでしょう。
重力か、光か
やはり20世紀前半の激動と戦争の時代に、弱い者の立場に立ってひたむきに生き、34歳の若さで死んだユダヤ人女性思想家シモーヌ・ヴェイユは断章集『重力と恩寵』の中で、求める目的とは反対の結果をうむ努力と、たとえうまくいかないことがあってもいつも有益な結果をうむ努力の仕方があると述べていた。
いわく、
「前者は、内心のみじめさに対する(まやかしの)否定を引き起こし、後者は、自己のありのままの姿と愛する者との間のへだたりをたえず注意させることによる」
と。
これはまさに『重力と恩寵』という問題を身近な例で示したものと言える。
というのも、彼女の言う「重力」とは、心の惰性的で功利的な働きのことであり、それに対して、「恩寵」とは、心の単なる自然的な働きを超えたものを指し、光とも言い換えられているからである。
どちらを選ぶべきか、それは今週のあなたの問題でもあります。
今週のキーワード
恩寵とは光だ