しし座
わがままに、そして高貴に
飼われた鷹のごとく
今週のしし座は、「きらとする鷹の瞬(まばたき)燄(ほのお)なる」(松瀬青々)という句のごとし。あるいは、胸の内に、改めて高貴な魂と使命を宿していくような星回り。
おそらく野生の鷹ではなく、人に飼われている鷹。自由を奪われ、むき出しの獰猛さはもう陰を潜めている。けれどそれゆえにと言うべきか、胸の内に高貴な魂を秘めていたことをこの鷹は思い出そうとしている。
掲句では、それが鷹が瞬きをするたびに、目が炎のようにきらりと光るという形で表現されている。例え、絵に描かれた豚であれ、瞬きをすればそれはもう生きているのだ。では、それが鷹であればどうか。
高貴な魂と、果たすべき使命は、言葉の上では美しいが、実際に日々の生活の中においてみれば扱いにくいことこの上なく、後回しにされてしまいがちだ。けれど、やはりそれは死んではいなかったのだ。
「鷹」はまだ自分の中で生きていた。そんな高揚感に思わず誘われていくような今週です。
漱石からの助言
日本人の平均寿命も80年を超えた現代では、限られた時間の中でどれくらい強く生を燃焼させるか? という問いの立て方はもはや時代遅れなのかもしれません。
とは言え、やはりそのような問いを地で生きていった者の言葉には、他の人が口にすばれ、キザに聞こえる言葉にも独特の凄味が宿ります。
例えば、50年でその生涯を終えた日本を代表する文豪・夏目漱石。彼は若い弟子にあてて、自らの弱さをいかに扱うか、という問題について手紙にしたためていますが、そこには後の『こころ』にも通じる師弟関係を思わせる熱さがこもっています。
「他人を決しておのれ以上遥かに卓越したものではない。また決しておのれ以下に遥かに劣ったものではない。特別の理由がない人には僕はこの心で対している。」
「君、弱い事をいってはいけない。僕も弱い男だが弱いなりに死ぬまでやるのである。やりたくなったってやらなければならん。君もその通りである。」
「死ぬのもよい。しかし死ぬより美しい女の同情でも得て死ぬ気がなくなる方がよかろう」
これぞまさに、おのれの弱さに悩みながらも、いい意味でわがままに、そして高貴な人生を生き切った漱石ならではの、今のあなたへの助言といえましょう。
今週のキーワード
弱さは高貴さを養う