しし座
素足の自分へ
川を超える
今週のしし座は、『夏河を越すうれしさよ手に草履』(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、身も心も軽くなって素直になっていこうとするような星回り。
真夏の暑いさなか、目当ての村に向かって歩いていると、目の前に小さな清流が出てきたので、橋があるかなど気にもとめず、一気に川をわたっていったのでしょう。
この時の爽快感というのは、おそらく身体的な快適さというだけでなく、心の奥深くまで沁みとおっていくようなもので、文字通り身も心も洗われるようなものだったように思われます。
逆に言えば、日ごろ私たちは休日にキャンプへ行ったり、打ち上げの席で冷たいビールで乾杯したりしても、なかなか身も心も洗われるということはなく、その意味で、「夏河を越す」ようなことは滅多にないのかも知れません。
そのためには、まず「草履」を脱いで素足にならなければならない。これは使い古した紋切り型の理解のパターンを捨てるということであったり、「自分には知識や経験がある」というプライドや思い込みをいったん脇にどけ、年下であろうとお構いなく教えを乞うていくような態度にも通じていきそうです。
そして何より、赴こうとしている土地への親和力のようなものを、じかに感じようとする素直さこそが、心身の浄化を促したのではないでしょうか。
8月13日にしし座から数えて「心的基盤」を意味する4番目のさそり座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、今までついぞ超えられずにきた川を一つ越えていくつもりで過ごしてみるといいでしょう。
『暮れなずむ女』のケイト
ドリス・レッシングが1970年代に女性の自己発見について描いた『暮れなずむ女』では、キャリア・ウーマンになるより結婚を選んだケイトが、末の子どもがついに家を出て独り立ちしたのをきっかけに、40代半ばにして初めての仕事につこうとしていました。
それはミセス・ブラウンではなくケイト・フェレイラとしての人生への旅立ちを認めるパスポートのようなものであり、そこで彼女はみずからをスケールダウンさせて中流階級の主婦たちの一員に見えるように着込んでいた古い服を脱ぎ捨て、セクシーで洗練された服を買いました。が、しかしケイトはすぐにそれに飽きてしまうのです。
彼女は職場で評価されていましたが、どうしてもみんなの母親的役割についてしまっていることに気付き、その発見によって彼女は落ち込み、神経衰弱になってしまいます。しかしこの精神的混乱のなかで、彼女はついに未来は昨日の続きではなく、おてんばで、怖いもの知らずで、貪欲で、もちろんセクシーでもあった少女のころに中断してしまったところから、再び始まるのだという真理をやっと悟ることができたのでした。おそらく、その瞬間にケイトは川を越えたのです。
今週のしし座もまた、花の開花に遅すぎるということはないのだと思い直していくべし。
しし座の今週のキーワード
少女の頃の自分からのバトンを引き継ぐ