しし座
超個体の生態
細胞間のコミュニケーションこそが
今週のしし座は、巣と共に生きるミツバチのごとし。あるいは、コミュニケーションの活発さによって、単なる個体やその集合以上の生を送っていこうとするような星回り。
春、気候が温暖になってくるとミチバチたちが活動を始めていきます。じつはかなり前から、温暖化など気候変動の影響に対するミチバチたちの反応やその数の減少が注目されてきましたが、このミツバチという生き物は、知れば知るほど不思議な生き物なのです。
花が咲き始めると、働きバチが収穫をはじめ、女王バチは一つの巣に数万匹はいるとされる彼らのサポートを受けながら、まず働きバチ(すべてメス)のための受精卵を産みます。そして巣の中のハチが十分な数にまで増えたら、次に雄バチのための未受精卵、続いて次代の女王バチ候補の卵を王台に産んで、やがて仲間とともに古巣を後にし、適度に離れたところで新しい巣を造営する。その数日後には、新しい女王バチが古巣で誕生し、旧女王バチに代わって産卵を開始する。これでミツバチのコロニーの複製が完了するのだそう。
こうしたミツバチの活動の実態を解明した生物学者のJ・タオツらは、ミツバチの巣全体を一匹の動物と見る「超個体(スーパーオーガニズム)」という説を提唱し、そこでは超個体を次世代に繋げていく女王バチを“生殖機能”に、大勢の働きバチをその個体を構成する“体細胞”にするものと捉えており、これは規模感を人体に置き換えても、細胞間のコミュニケーションこそが、その賑やかさこそが生きていることを支えているのだという形で、同じことが言えるのだそう。例えば、分子細胞生物学者の丸野内棣は、やはりミツバチの活動を例に、そうした「超個体」の生態について次のように書いています。
ミツバチのコロニーの生活は移り変わる自然環境に集団で適応し、維持し、発展させています。ミツバチのコロニーの生活は数万の個体で構成されており、その個体の活動は周囲の状態や仲間の存在に適切に反応しています。ミツバチのコロニーの秩序は、食物の共同貯蔵や育児温度の制御に代表されるように、共同活動と競争によって成り立っています。その結果、コロニーは超個体として個々のミツバチの合計以上の生存をもたらすのです。(『細胞は会話する―生命現象の真の理解のために―』)
4月24日にしし座から数えて「家、家庭」を意味する4番目のさそり座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ひとつの「超個体」であると同時に、大いなる「超個体」の一部である事の喜びをよく実感していくことができるかも知れません。
異種混淆の宴
考えてみれば、腸内細菌や皮膚の常在菌など、人間が他の生物から厳密には独立していない以上、ウイルス感染のような事態はある意味で不可避の出来事なのですが、生命学者の中屋敷均は『ウイルスは生きている』の中で、そうした遺伝子の「ごった煮」状態は生命の進化においても不可欠だったのだとした上で、次のようにも述べています。
そこに他者と切り離した「自己」のような「純度」を求めるのは我々側の特殊性であり、生命に独立性を持ち得るものがあるとしたら、それは「我思う、故に我あり」とした我々の「観念」だけではないのかと思う。
その意味で、コロナ禍を経た(?)現人類は、人間側の確固不変の独立した自我を打ち崩した先に広がる新しいリアリティへと開かれていく先頭に立っているのかも知れません。
今週のしし座もまた、そうした既存の近代的なリアリティの書き換えを行っていくには絶好のタイミングと言えるでしょう。
しし座の今週のキーワード
超個体としての家族的共同体