しし座
それでもなんとかやっていく
イマジネーションの整理整頓
今週のしし座は、タクシーの座席で頭を真っ白にしていく男のごとし。あるいは、古い自分や、惰性のまま繰り返しがちな生活パターンを、一新させていこうとするような星回り。
村上春樹は短編小説『タクシーに乗った男』の中に、「頭の中が真っ白になり、それが少しずつもとに戻るのにずいぶん時間がかかった」という下りがありました。
あらすじは省略しますが、ある女性がかつて自分で買い取って何年も見ていた絵の中で、タクシーの後部座席に座っていた男性とそっくりの人物と、旅先のタクシーでたまたま乗り合わせた時の描写です。
「強い光線が当たる部分が白くぼやける現象」のことをカメラ用語でハレーションと呼びますが、それが精神的なレベルで起きたものとイメージすればいいのかも知れません。
真っ白になっているあいだ、頭は何も考えていないという訳でなく、むしろ唸りを立てるほどのすごいスピードで懸命に情報を整理していて、「現実をきちんとした現実の枠の中に入れ、イマジネーションをきちんとしたイマジネーションの枠の中に入れ」ようとしている。
それは、今までの常識や現実感覚をいったん捨てて、新しいそれを目の前のなまなましい情報から吸い上げ、再構築するまでの立ち上げ期間でもあったのではないでしょうか。
1月4日にしし座から数えて「脱構築」を意味する3番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうして過去の古びた常識や物の見方をできるだけあっさりと入れ替えられるよう、頭を真っ白にしていく瞬間を心待ちにしていくべし。
ブリコラージュ的思考の重要性
文化人類学者のレヴィ=ストロースは、たえざる変化の最中を生きる現代人の考えと比べ、原始時代とほとんど変わらない暮らしをしているような未開人の考えが劣っているといった判断は無意味で、両者はまったく別の思考であるとすることで、「人類は歴史的に進歩する」というそれまでの常識をひっくり返してしまいました。
例えば未開人の社会には、周囲の今そこにあるあり合わせの材料を使って椅子や犬小屋など必要なものを作って目的を達し、たくましく生きていく知恵があります。レヴィ=ストロースはそれを「ブリコラージュ(日曜大工)」と呼びました。
未開社会には、修理工場もなければコンビニやホームセンターもありませんから、日常どれだけ工夫して必要とするものを創り出せるかが、生死を分けることになるのです。
じつはこれと同じ能力は、昔から科学者や思想家たちが自分で実験研究しようという時、とりあえず使えるものは何でも使ってやっていた訳ですが、逆に簡単に何でもそろうようになってしまった現代社会ではむしろ退化してきつつあるのではないかと思います。
その意味で今週のしし座は、頭を真っ白にする中でいかに「ブリコラージュ」的能力を取り戻し、たくましさを磨いて発揮していけるかが問われていくのだとも言えるでしょう。
しし座の今週のキーワード
精神的なハレーション