しし座
口先だけの人間にならないために
下半身の充実
今週のしし座は、白隠の養生術のごとし。あるいは、「自己の根本」としての丹田にひたすら意識を集中させていこうとするような星回り。
簡単には答えの見つからないような難問や深い謎を突きつけられたときほど、その人の真価が問われると言いますが、それは何を問われているのでしょうか。
ひとつはっきりしているのは、一筋縄ではいかない困難や謎というのは、私たちの想像以上に心身に多大な負荷をかけるものであり、だからこそそういう困難や謎に取り組むことが当たり前の世界である学問や宗教の世界では、伝統的に心身をケアするための教えもまた連綿と受け継がれてきました。
例えば、禅の復興者として知られる白隠(はくいん)は、中世に中国から入ってきた公案(古人の言動を問題として与え、それを体得することで同じ悟りに達する)を中心とする禅を体系づけ、道筋を明確化するとともに、禅の世界を分かりやすい言葉で表し、身近なものにした人物ですが、その著作の中でも最も読み継がれてきたのが『夜船閑話』です。
そしてここで説かれているのは、白隠が若いころに座禅に行き詰まり、身体に変調をきたした際、京都白川の洞窟に住む白幽子という仙人から教わった内観の法についてなのですが、それは道教と仏教を織り交ぜたきわめて実践的な養生法であり、健康術でした。
もしこの秘要を修行しようというのであれば、しばらく参禅をやめ公案から離れ、まず熟睡して目覚めなさい。まだ眠りに入らず、瞼を合わせない前に、長く両脚を伸ばし、強く踏みそろえ、体中の気をへそ下の下腹部、腰・足、土踏まずに集め、その時に応じて、この丹田こそが自己の根本であると心を集中しなさい。
12日にしし座から数えて「存在の基盤」を意味する4番目のさそり座に火星が入っていく今週のあなたもまた、改めて現世的な身体へのまなざしをきちんと深めていくことをテーマにしつつ臨んでいきたいところです。
脱AI化の必要
グローバル経済はAIの導入という後押しを得て、「AIを導入すれば、煩わしい手動作業や人間関係の摩擦を省略し、便利な生活が手に入りますよ」といった消費者への売り込みを劇化させていますが、そうして私たちはなし崩し的に便利さを押しつけられる一方で、その分なんらかの人間としての能力を失いつつあるのではないでしょうか。
AIが普及して当たり前のように生活に浸透すれば、私たちはますます「命令すれば、なんでも応えてくれる」ことに慣れていくでしょうし、それは逆に言えば、「言ってもなにもしてくれない」生身の他者への不満を大きくしていくということでもありますし、必然的に他者との関係そのものが分からないという子どもも増えてくるかも知れません。
つまり、AIの普及に応じて私たちが迫られていくAIとの共生には、私たち自身が人間としての能力を保ったり、そもそも人間固有の能力とは何かということを再発見していく必要があり、その前提としてAIと同化してしまわないよう脱AI化を図っていく必要があるように思います。
今週のしし座もまた、どういう方向へ自身を教育していくべきか、またしていくべきではないかということを、ひとつ考えながら過ごしてみるといいでしょう。
しし座の今週のキーワード
「あのね、人間は機械じゃないから、ただ命令しても言うことなんて聞いてくれないの」