しし座
正しい問いを見出す
ローマ帝国が犯した過ち
今週のしし座のテーマは、ローマと同じ轍を踏まないこと。すなわち、自身が無意識に抱いている差別感情に気が付いていこうとするような星回り。
多くの戦争や領土拡大、反乱の多発などにもかかわらず拡大し維持され、終わることのないかのように思われた覇権的平和、すなわち「パクス・ロマーナ」を誇ったローマ帝国も、地中海世界が世界史の「中心」の位置から降りていき、「周辺」たる蛮族世界(アルプス以北)が代わりに割り込み、拡がり、やげて新たな中心へと逆転していく歴史的過程において衰退して滅びていきました。
歴史学者の弓削達は、バブル絶頂期にあって日米がタッグを組んで国際世界を牽引していくかに思われた1989年に刊行された『ローマはなぜ滅んだか』のあとがきのなかで、次のように述べています。
長年の苦労ののち、やっと『中心』に位置した日本が、新興工業国や東南アジア(『周辺』)等の第三世界を、自らの位置をおびやかす敵と見るか、それとも、『日米新時代』の次の文明世界を作り上げてゆくパートナーと見て、いま彼らの難局に、目前の大損は覚悟で、手をさしのべるか、という選択に、われわれの明日はかかっていると思われるのである。ローマ末期の指導者たちは、この選択を誤った。
弓削は本文のなかでも、ローマ帝国がその末期においてさまざまな形で支えられていたゲルマン民族に対して、野蛮、残酷、非理性などのレッテルを貼って、根深い差別感情をもっていたことを指摘していますが、これは今なお日本とアジア国家ないしアジア諸民族との関係を考える上でも大いに重なるところがあるのではないでしょうか。
7月18日にしし座から数えて「見えない領域」を意味する12番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、まずは自分を「ローマ末期の指導者たち」に重ねてみるといいでしょう。
正しい読み筋を持つということ
例えば、2000年代に起きた史上最大の企業スキャンダルであるエンロン事件は、70年代のウォーターゲート事件と比較すると、明らかに違いがあります。それは後者の場合、スキャンダルの種は隠されていて、記者が危ない橋をわたって関係組織内部に入り込み、情報を物理的に掘り出すことで初めて明らかになったのに対し、前者の場合は隠された情報はなくて、はじめからすべて“公開されていた”という点です。
エンロン事件をすっぱ抜いた記者は、公開されてはいたがパッと見ただけでは分類すら不明瞭で何を示しているのかも分からないデータを地道に読み解き、つなぎ合わせていくことで粉飾決算の実相を浮かび上がらせたのです。
この違いの意味するところは、あらゆる情報がデジタル空間においてアーカイブ化されるようになった現代においては、<答え>はそれとしてきわめて具体的に目の前にあるにも関わらず、私たちはそれを理解するための<正しい問い>を見出すことができないがゆえに、多くの歪んだ状況を認識すらできないでいるのだ、ということ。
その意味で今週のしし座もまた、どれだけ自分の置かれた事態を客観的に認識できるかが問われていくことになるでしょう。
しし座の今週のキーワード
なぜ私は失敗する(した)のか