しし座
現実さんとの再会
「盆の村」へと通じる道
今週のしし座は、『どの家も道につながり盆の村』(小原啄葉)という句のごとし。あるいは、死者の歩いた道といつの間にか交錯していくような星回り。
どの家も道につながっている。あえて言及されることすらないほどに当たり前のことではありますが、ただそれが「盆の村」なのだと言われてみると、少し印象が違ってきます。
その道をたどって家へと帰ってくるのは死者の霊であり、生きた人間の方でも彼らを安らかに迎え入れるべく、草を刈り掃除を済ませておく。そういうことを、かつての日本人はどこの地域でも行ってきたのでしょう。
地縁が崩壊し、都心部を中心に核家族化がすすんだ今となってはそうした風習もすっかり廃れ気味となってきましたが、それでも私たちが普段歩いている何気ない道も、この時期になればいまだどこかで「盆の村」へとつながっているのだとも言えます。
逆に考えれば、私たちが歩いている人生の道のりというのは、その大方は過去に死者たちによってすでに何度も歩まれ、踏み固められてきたものに過ぎないのであって、生者にできることは、死者たちの力を借りてほんの少し道を先へと開いていくことだけなのかも知れません。
その意味で、19日にしし座から数えて「世間と群衆」を意味する10番目のおうし座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、みずからの人生の歩みが過去に何度も繰り返されてきたパターンと重なっていることに気が付いていくことができるはず。
マンションの広告チラシへの落書き
坂口恭平が自身の思考の軌跡や原体験について綴った『現実脱出論』の中で、実際に彼が子どもの頃にやっていた遊びを振り返りつつ、次のように紹介していました。
新聞の折り込みチラシに入っているマンション広告の間取り図に上から落書きして、自分の理想の部屋を描くのだ。この遊びは少しずつエスカレートしていき、斜め四十五度の線を部屋の角から伸ばして「天井高」を作り出し、架空の二階建てのマンションを作ったりするようになった。紙の上なのに、立体的に空間を作り出せることに喜びを見出していたのである。さらに、二点透視図法を覚えてからは、空中に電車が走る透明のチューブが縦横無尽に張り巡らされた未来都市を描きまくっていた。
坂口は同書で「現実逃避」と「現実脱出」を区別した上で、先のような遊びを後者に位置づけています。すなわち、「本人の意図とは裏腹に現実の存在感を強化してしまう」のが前者だとすれば、後者はこれまで「現実的ではないと切り捨ててきたことを直視してみる」ことなのだ、と。
同様に、今週のしし座もまた、うすうすその存在は知っていたのにこれまで直面せずにきた現実をスッと浮き彫りにしていくことがテーマとなっていくでしょう。
しし座の今週のキーワード
現実逃避か、現実脱出か