しし座
心臓的振る舞い
視線が絡む
今週のしし座は、植物状態の患者に接する熟練ナースのごとし。あるいは、「視線が絡む」ような身体感覚を導きの糸にしていくような星回り。
以前なにかのインタビューで、先輩ナースが植物状態の患者さんの顔を覗き込んで、もうほとんど接吻に近いような状態で目を合わせていたのを見たという話を読んだことがありました。そこでは、さらに「ある瞬間に視線が絡むんですよ」とも答えていたのですが、「視線が合う」ではなく、あえて「視線が絡む」という言い方をしていて、やはり大変印象に残ったのです。
それは単に少し角度を変え、視線をそらし、通過してしまえばそれで終わりという関わり方ではなく、どうしてもそこに押し戻され、引き寄せられてしまうような関わり方をすることが、実際のケアの現場では求められるし、実際に熟練ナースと患者においてはそういう振る舞いが自然と成立していくのだということでもあったのではないでしょうか。
そして、このようにある程度濃密な身体性を介することで、私たちは自己と他者とか、主体と客体といった区別が未分化な次元の存在に気付き、何かしらいきいきとした意味や体験(<ケア>)が生みだされていく。逆に言えば、「視線が絡む」ような身体感覚が持てず、頭であれこれ考えたことだけで物事を処理していこうとするときほど、意図せず相手を傷つけてしまったり、力で抑えつけてしまうということが起きやすいのかも知れません。
その意味で、3月21日にしし座から数えて「自分とはまったく異なった哲学」を意味する9番目の星座で春分(太陽のおひつじ座入り)を迎えていくあなたもまた、いかに「視線が絡む」方へと自身を切り替えていけるかどうかがテーマとなっていくでしょう。
血と心臓と愛と
「視線が絡む」とは、別の言い方をすれば、まなざしとは異なるエネルギーの糸が絡み合う、ということなのかも知れません。そして、そうした「糸」は伝統的なシンボリズムの世界では、しばしば血液を運ぶ血管として表されてきました。
からだ中を絶えず流動しては濡らす血は、死体の不動と対照をなし、長きにわたる伝統に基づいた生命の象徴であり、動脈を通して臓器や四肢の末端まで酸素や栄養分を届け、静脈を通じて働きを終えた血液を戻すという心臓の「正しい動き」のおかげで、肉は生温かくなり、人は自己を自立して構成し、話し、聞き、動き、見、触れ、味わい、匂い、愛しあうことができる訳です。その意味で、こころ動いたときに流れる涙も、人に対する愛もやはり血であり、心臓から送られてくる波であり、人と世界を貫いてめぐるひとつの巨大な生命現象のうねりの一部であるはず。
つまり、生命としてきわめて自然な衝動に文字通り身を任せていくとき、脳という小君主の小賢しい作為や操作をこえて、血と心臓という対に第3の用語である「愛」が加わっていくのだということ。今週のしし座は、そうした自身の活動や関わりがどこを原動力とし、どこへと向かっていくのかということを、いつも以上に意識してみるべし。
しし座の今週のキーワード
まず心臓(ハート)から語り、動くこと