しし座
累からおりる
こちらは8月16日週の占いです。8月23日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
大地に還るべく
今週のしし座は、「陋巷に生きる」という言葉のごとし。あるいは、それまでのしがらみや軋轢から解放されて、真っ逆さまに下へ落ちていくような星回り。
「陋巷(ろうこう)」とは、狭い路地、また俗世間のこと。「陋巷に生きる」と言えば似た言葉として「零落する」という言葉も挙げられますが、零落にはそれに伴う快楽があり、「陋巷に生きる」というのもそういう快楽をこそ追求していく生き方のひとつの型を言い表している訳です。
例えば、永井荷風(1879~1959)は高名な小説家の身でありながら、浅草の楽屋に行ってストリッパーたちと話すのを好んだり、私娼街を歩き回り、ごちそうも浅草あたりのとんかつ屋でとるとか、自分をひけらかすより、巷のなかに身を隠し、江戸庶民の世界に身を浸そうとしました。とくに、最後は吐血して孤独死をするのですが、それは千葉・市川の小さな一軒家の六畳間で、脇には空になった一升瓶が転がっていたそうです。
長く生きているとどうしても社会的地位や肩書きがくっついてしまいますが、人間にはイカロスのようにどんどん高みへ登っていきたいという気持ちと、重心に引かれて下へ下へと降りていきたい気持ちの、両方があります。そして今のあなたの場合、後者の、何にも持たない生まれてきたときの自分に戻り、大地に還っていきたいという方向性が強まっているのだと言えるでしょう。
16日にしし座から数えて「存在の古層」を意味する4番目の星座であるさそり座で上弦の月を迎えていくあなたもまた、自分の中にも眠っている、自然との深い互酬関係の中に自分を沈めていきたいところです。
「自分の土俵」から逃げ出そう
得てして人は自分の好きなことや得意な面から、自らの存在価値を見積もりがちですが、それだけではいくら経験や知識を蓄積してもアマチュアの域を出ていけないし、そういう人が作り出すものも、本当の意味でクリエイティブなものとはなりえないのだと思います。
創造性とか、創意工夫というのは、むしろそうした自分のよく知る土俵から「逃げる」ことに成功したとき、後からついてくるものであって、大抵の場合は土俵の中から出ていくことができず、ジッとしていながら夢を見ているに過ぎません。そして日本社会というのは、そうした「忠犬ハチ公」的な耳障りのいい“なめらか”なストーリーを人に押し付けがちでもあります。
しかし、赤ん坊でさえ「はいはい」して母のひざ元から逃げ出すように、人間というのは本来降り積もるこの世の係累から免れて初めて身も心も晴れ晴れとしていられるし、大いなる循環の輪の中に在り続けることができるのではないでしょうか。
そして今週のしし座ならば、自分の土俵の抜け穴を見つけたり、するりと逃げ出してみせることも、そう難しくはないでしょう。
しし座の今週のキーワード
メビウスの輪