しし座
縁にみずから働きかける
飢えた蜘蛛
今週のしし座は、「つゆばれや一筋横に蜘蛛の糸」(小沢碧童)という句のごとし。あるいは、自分以外の誰かのためのもうひと踏ん張り。
雨が長く続けば蜘蛛の巣には獲物がかからない。ゆえに飢えるしかない。掲句の蜘蛛は、梅雨の晴れ間、飢えに耐えかねた蜘蛛が早々に巣を張り始めたところなのでしょう。
ただし「梅雨晴れ」は梅雨明けではなく、あくまでほんのひと時の晴れ間であり、また雨が降り始めるだろうことを作者は予見している訳です。もしかしたら、蜘蛛自身もどこかでそれを知っているのかも知れません。それでも、ただ座して飢えるのを待つよりはと考えたのでしょうか。
確かに、一本の蜘蛛の糸が人を救うことだってある。奇しくも、作者は『蜘蛛の糸』の作者である芥川龍之介に俳句を教えていた人物でもありました。そして芥川の『蜘蛛の糸』も、せっかくの頑張りであっても、自分だけ助かろうとすれば地獄へ落ち、誰かのため祈りであれば救いとなるという運命をわける紙一重の気持ちの置きどころこそが焦点だったように思います。
6月2日にしし座から数えて「自分を無くすこと」を意味する8番目のうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、知恵の使いどころを間違えないようにしていきたいところ。
心のとめよう、体のふれよう
「合縁奇縁」という言葉がありますが、人の出会いや縁というものは実に不思議なものです。しかし「縁」などと言うと、さも人知を超えた力が働いてすべてのお膳立てが整えられているように思い込みがちですが、必ずしもそうではありません。
すべての縁が「事」を起こすわけではなく、「事」の起こり方は「心」の運動に大きく左右されていくのです。南方熊楠という人は、このことを「心のとめよう、体のふれよう」で事は起こるのだ、と言いました。
つまり人間はさまざまな縁の連鎖や分離、あるいは結合にただ翻弄されるだけではない。縁にみずから働きかけることで、おのずから縁の「起(おこり)」すなわち、縁の自然な展開をもたらすことも出来るのだと。
そうした「起」を見極めるためには、絶え間なくあちらこちらをさまよいがちな心をしっかりとめて、ちゃんと風の通り道に巣を張る蜘蛛のように、おのれが何を欲していて、それを持っている相手がどの方向にいるのか、そして、その相手にどう働きかけるべきか、ということを知っていなければなりません。
今週のしし座もまた、ここぞという縁の「起(おこり)」をもたらすべく、必要な準備を進めていくべし。
今週のキーワード
機先を制する