しし座
物語発生装置
こちらは4月12日週の占いです。4月19日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
4次元的なプロセス
今週のしし座は、「たたみこまれて内臓化する」動きのごとし。あるいは、組織であれ事業であれ、生きた事物に必要な「動き」を見抜いていこうとするような星回り。
量子力学の父ニールス・ボーアが原子レベルのモデルを考えていたとき、「動く数学的なモデル」を作って思案を重ねていたそうですが、20世紀に入ってから科学やデザイン、建築や芸術などさまざまな分野でこうした「動くモデル」が発明・発見のために用いられるようになってきました。
その中に「ガストロフルックス」というモデルがあります。平面だと16の花弁をもつ花を連想させる形をしているのですが、これを中心部で絞りながら球体にしていくと、二重の球が生じてきて、それがさらに内側へとたくし込まれて拡大し、もう一度、外側へと循環していきます。こうした運動は「4次元なプロセス」とも呼ばれていますが、じつは生物学で「内臓化」と呼んでいるものとも酷似しているのだそうです。
「内臓化(Gastrulation)」は、ほとんどの動物の胚発生の初期段階で見られるもので、これによって胚は分化を開始し、異なる細胞系統を確立して、背腹とか前後など体の基本軸を設定していくのだとか。つまり、生物が生物として進化していく際には必ずこの動きが必要となってくる訳です。
12日にしし座から数えて「直観的知性」を意味する9番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、静止した現象をいじくり回すのではなく、あくまで動きのなかに現れてくるものを直観的に受け取っていくべし。
「旅の僧」として
能を、彼方から誰かがやってくる「訪れの演劇」と呼び始めたのが一体誰だったのかはともかく、これは非常に本質をついた巧い言い方です。
そして、そんな「訪れ」の主たる人物である「旅の僧」には、どこか今週のしし座の人たちの姿が重なっていくように思います。
よそ者である「僧」は、どこからか舞台にやってきては、戦争で人を殺した過去に苦悶する武士であれ、その恋と欲望ゆえに罪に問われる女たちであれ、異形の獣や桜の精であれ、舞台上でやはり彼方からやってきた亡霊たちと出会っていきます。
僧は彼らの声を聞き、時に諭し時に反論しつつも、次第に声を受け入れ、彼の罪が許され、悲哀が癒されていくに従って、彼らの声はいつの間にか<物語>となって伝えられていくのですが、これは先の生物における「内臓化」とも通じているのではないでしょうか。
そして今週のしし座もまた、そんな一つの物語が成立していく過程に直接ないし関節的に関わっていくことが大切なテーマとなっていくことでしょう。
今週のキーワード
物語と内臓化