しし座
想起と哲学
虚しさから逃げないこと
今週のしし座は、自己啓発から哲学へ。すなわち、「役に立つこと」の追求から「真実と共に生きること」の追求へと改めて舵を切っていくような星回り。
現代社会はいま自己啓発の大量消費へと向かっていますが、それは裏を返せば、現代人が「自分には何もない」という虚しさを深く抱えていることの証左でしょう。
より高い能力、より大きな成功へと人々を駆り立てていく自己啓発の言葉は、ほとんど例外なく、より深く自分自身を探っていくことを奨励しますが、社会の流動性がこれだけ高まり、ますます生き残り競争が激化している中でそうしたダイブを促せば、自分に確かな価値や強みを見出すというより、むしろいかに自分が矮小でつまらない人間であるかということを痛感する方がより自然であるはず。
そもそも自己啓発は、それを構築するロジックを「信じる」ことを人に要請しますが、「自分には何もない」ことにうすうす気付いている人ほど、まともに考えることを放棄して信じ込もうとするのではないでしょうか。その方が、自らの価値や他者との繋がりを実感していくのに「役立つ」からです。
こうした不安と虚しさのスパイラルは、働き方がより曖昧になり、AIが本格的に人間から仕事を奪っていくようになる近い将来へ向けて、ますます深く大きなものになっていきます。そして、そこから抜け出していくための鍵は、結局「自分こそが正しい」という思い込みを否定し、自分の外側に広がる真理に目を開いて、哲学していくことにあるのではないでしょうか。
10月1月から2日にかけて、しし座から数えて「意識の開け」を意味する9番目のおひつじ座で特別な満月を迎えていく今週のあなたもまた、改めて自分にとって「哲学する」とはどういうことなのかを問うていくことがテーマとなりそうです。
心を虚しく思い出す
「多くの歴史家が、一種の動物に止まるのは、頭を記憶で一杯にしているので、心を虚しく思ひ出す事が出来ないからではあるまいか」という小林秀雄の言葉を借りれば、今週のしし座はまさに心を虚しくして、ただ自分にとってかけがえのない事実を想起していくことができるかどうかが問われていくはず。
消えてなくなったら寂しい、思い出せたら嬉しい、そんな当たり前の感情を、しばしば私たちはつまらない理屈や見栄で台無しにしてしまいます。先の言葉の前に、小林は次の一文を添えています。
「思ひ出が、僕等を一種の動物である事から救ふのだ。記憶するだけではいけないのだらう。思ひ出さなくてはいけないのだらう。」(『無常という事』)
今週あなたは、何を思い出すのでしょうか?哲学するとは、まずもってそうした類の想起なのだということを、今週は胸に刻んでいくといいでしょう。
今週のキーワード
純粋想起