しし座
自然任運(じねんにんうん)
自分の中に空洞を作る
今週のしし座は、「天覆ふ鰯雲あり放心す」(山口誓子)という句のごとし。あるいは、意欲を前面に出し力を込める代わりに、自分の中に「からっぽ」の空洞をつくり出していくような星回り。
秋の澄み切った青空に、うろこ状をなした鰯雲(いわしぐも)が広がっていく。
網のような、砂のような、あるいは花のような幾何学模様が、どこまでもどこまでも大空に続いていくのを眺めていると、すべての思考、すべての感情が一瞬のうちに停止して、自分の中に「からっぽ」の空洞が広がっていく。そのことを作者は「放心す」と表現してみせたのでしょう。
そのとき作者は、生活のことも、妻子のことも、俳句のことさえも、すべて頭脳から飛び去らしめて、秋の空が描かせる天の構成に浸りきっていたはず。真に大胆であるということは、果たしてこういうことを言うのかも知れません。
人前に立たねばならない時、大事な決め事を前進させていかねばならない時こそ、自分の中にそうした「からっぽ」の空洞をつくりだし、目の前の人間や状況をそこに吸い込んで一つに混ざりあっていくこと。
11月4日(月)にさそり座から数えて「他者との交わり」や「公的アピール」を意味する7番目のみずがめ座で上弦の月を迎えていく今週は、そんなことを1つ頭の隅において過ごしていくといいでしょう。
運に運ばれること
どれだけ努力を重ねたとしても、それが望んだ結果につながるかどうかは分かりませんし、最後は運を天に任せるしかない。では何のために努力するのかというと、それは自分の限界を知るため。
限界を知ることで人は自らのDNAにスイッチを入れることができ、同時に、人生の重荷から解き放たれるような安堵感を覚えることもあります。
掲句の作者が「放心す」という心境に至るまでにも、おそらく多くの労苦やままならない状況があったはず。
自分ひとりで頑張れることなんてたかが知れており、何か大きなことを成し遂げようと思ったら、周囲や大切な人との交わりによって「運に運ばれる」ことが大切なのだということをよく分かっていたからこそ、天に浸りきることができたのだと思います。
その意味で、今週のあなたもまた、自分をスーッと運んでくれるような相手は誰なのか、ということを再認識していく時と言えるのかも知れません。
今週のキーワード
天の構成に浸りきる