しし座
もし今日が人生最後の日だとしたら
あをあをと死にゆけり
今週のしし座は、「まぼろしのあをあをと鯊死にゆけり」(秋元不死男)という句のごとし。あるいは、かけがえのない死を生きるためのあやふやさを、身にまとっていくような星回り。
掲句では、抜群の擬声語効果によって「あお(青)」をまぼろしと鯊(はぜ)の両方を染めあげるだけでなく、死に様にもかからせることに成功している。
ふだんはジッと息を殺して水底に生息している鯊(はぜ)が、その白い腹を見せて浮かび上がり、そこにさらに作者の過去・現在・未来が影絵のように重なっていく。
こうして身に染みて痛ましく響いてくる中七の「あをあをと」は、無限定の時間と空間となって死を含みつつ、豊かに生を広げみたしてくれる。
そして、今週のしし座の目指すところも、ちょうどこの擬声語の働きそのものと言えるだろう。
「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」ではないが、日々積み重ねていく微かな想像力の働きこそが、人を自由に、かつ迷いなくしてくれるのだ。
常住死身(自分は間もなく死ぬ)
先の『葉隠』の一節は、死ぬ覚悟ができていればこそ己の職務を全うできる、という意味で用いられた言葉だが、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学の卒業式でのスピーチの中にも似たような話が出てくる。
「私は毎朝、鏡に映る自分に問いかけるようにしているのです。「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか」と。「違う」という答えが何日も続くようなら、ちょっと生き方を見直せということです。」
これは今週ぜひやってみてほしいことでもあります。
自分は死ぬつもりになれているか、と毎朝、鏡の中の自分にむかって問いかけること。さらにジョブスは次のように述べています。
「自分は間もなく死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役立つのです。なぜなら、永遠の希望やプライド、失敗する不安…これらはほとんどすべて、死の前には何の意味もなさなくなるからです。本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安にとらわれない最良の方法です。我々はみんな最初から裸です。自分の心に従わない理由はないのです。」
今週のキーワード
みんな本気で自分が死ぬとは思っていない