ふたご座
事実から神話へ
ある父子の話
今週のふたご座は、「算術の少年しのび泣けり夏」(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、若者の頭が、成熟した大人のそれへと変容していくような星回り。
自註より。
「愚息は父に似て数学的頭脳を持っていない。宿題が出来ないで一人シクシク泣く。それは哀れであるし、父から見れば気の毒でもあった。」
三鬼には息子がいる。俳壇の寵児であると同時に、女性関係が派手なことで有名で、とにかく破天荒な人だった。
妻と子をおいて単身神戸に移住したりなど、息子からすれば「よき父親」ではなかったかも知れないが、こうしてちゃっかり父としての俳句は残しているものだ。
息子も息子で大人になり、また父となっていく過程で、そんな「父」の生き方を全面的にではないにせよ、理解できるようになっていったのではないか。
今週のふたご座は、まるで掲句をめぐる父子のストーリーのように、自分とその周囲へ大いに変容を促していくことでしょう。
ヒルマンの「どんぐり」
例えば、「すなわち両親の影響力とは、実は両親に影響力があるという考え自体の影響力なのだ」というユング派の心理学者ジェイムズ・ヒルマンの言葉は、今週のふたご座にとって大きな導きの糸となります。
人の歩む道のりや、運命というのは、本質的に「氏(DNA)でも育ち(生育環境)でも」決まりませんし、もしかしたら「成長していく」ということ自体がみんなで懸命に現実だと思い込んでいるだけの偽装神話なのかもしれません。
ヒルマンは続けて、
人間の“たましい”がまるでどんぐりの実のように(人生を特定の宿命へと導く、固有のイメージ)、大きな樫の木としての自分に成ってゆくために、氏や育ちや出会いや試練を選んでいくよう、人間の中で作用し、人生を導いていくのだ
という言い方をします。
マネするべきは、そうしたどんぐりの実の提供するイメージであり、何よりも従わなければならないのは自分の内なる神話である。いっそそんな風に考えてみてください。
今週のキーワード
だんだん私になっていく